
背中に目立つデキモノを見つけても、自分で正体を判断するのは簡単ではありません。単なるニキビなのか、皮膚の下にしこりができているのかによって、必要な対応も変わります。「そのまま様子を見てよいのか」「病院なら何科を受診するのか」と迷う方もいるでしょう。
背中には皮脂腺が多いうえ、汗や衣服による摩擦などの刺激も加わります。そのため、ニキビだけでなく、粉瘤や脂肪腫といった良性腫瘍が見られることもあります。さらに炎症が加われば、急激な腫れや強い痛みに繋がる場合もあります。
実際、背中に生じるデキモノの多くは良性です。しかし、経過を見ている間にサイズが増したり、化膿や炎症を繰り返したりすれば、治療の規模が大きくなることもあります。
本ページでは、背中に大きなしこりが生じたときに考えられる病気を整理し、受診先や粉瘤・脂肪腫の治療について解説します。
背中にデキモノができたときに考えられる病気
「背中のデキモノ=ニキビ」とは限りません。皮膚表面の炎症だけでなく、皮下組織に生じた腫瘍が膨らみとして現れている可能性もあるためです。
背中は皮脂が多く、汗や衣服などによる刺激を受けやすい場所です。原因によって特徴や対処法が異なるため、主な原因疾患を確認しておきましょう。
粉瘤
皮膚の内側に嚢状の構造が生じ、そこへ角質や皮脂が蓄積してしこりとなる良性腫瘍が粉瘤です。でき始めは小さくても、内部に内容物が増えるにつれて徐々に膨らんでいきます。さらに炎症が加わると、それまで目立った症状がなかった粉瘤でも、赤みや腫れ、強い痛み、膿などが現れます。
汗をかきやすく衣服との摩擦も生じる背中では刺激を受けやすく、粉瘤が大きくなったり、炎症を繰り返したりすることがあります。
脂肪腫
柔らかいしこりが皮膚の下にあり、指で触れるとある程度動く場合には脂肪腫の可能性があります。脂肪細胞が増殖して形成される良性腫瘍です。通常は痛みを伴いませんが、時間をかけて少しずつ増大することがあります。そのため、自覚した時点で既に数cmほどの大きさになっているケースもあります。
脂肪組織が厚く、日常的に圧力や刺激を受けやすい背中は脂肪腫が生じやすいです。
ニキビ
皮脂の分泌量が増え、毛穴が塞がれることから始まるのがニキビです。背中では小さな赤い発疹として現れることが多いものの、炎症が進めば大きく腫れる場合もあります。
粉瘤や脂肪腫が皮下にしこりを作るのに対し、ニキビでは比較的皮膚の浅い部分に病変が生じます。発症には毛穴の閉塞やアクネ菌が関与し、体質やホルモンバランスの影響も受けます。
背中のニキビは長引くケースもあるため、なかなか改善しない場合は皮膚科への相談を検討しましょう。
毛囊炎(毛包炎)
ニキビに似た赤いぶつぶつや膿が見られても、毛嚢炎(毛包炎)の可能性があります。こちらは毛穴に細菌が侵入し、毛包に炎症が生じた状態です。きっかけとなるのは、カミソリによる細かな傷や蒸れ、摩擦などです。そこへ皮膚の常在菌であるブドウ球菌などが感染して発症します。症状が軽ければ自然治癒する場合もありますが、炎症が進むにつれて腫れが目立つこともあります。
皮膚がんなどの悪性腫瘍
頻度は高くありませんが、背中のしこりとして悪性腫瘍が見つかることもあります。皮膚がんや脂肪肉腫などは、初期には粉瘤や脂肪腫と区別しにくい外観を示す場合があります。
注意したいのは、短期間で目立って大きくなる、硬く形が不規則である、皮膚の色が変わる、出血や潰瘍が見られるといった変化です。痛みがなくても急速に増大している場合や、表面のただれ、出血が続く場合には慎重な判断が求められます。
外見だけでは良性・悪性を判断できないケースもあります。数週間経過しても消えない、あるいは大きさや見た目が変化し続けているしこりは放置せず、皮膚科や形成外科を受診しましょう。必要に応じて画像検査や病理検査を行います。
粉瘤の詳細
粉瘤とは
皮膚の内側に嚢状の組織が生じ、本来なら体外へ排出される角質や皮脂がその中に留まると、次第にしこりとして目立つようになります。これが粉瘤で、医学的には「表皮嚢腫」とも呼ばれる良性腫瘍です。形成外科や皮膚科では非常によく診療する疾患で、皮膚良性腫瘍のおよそ80%を占めると言われています。
発生しやすい場所の1つが背中です。皮脂腺が豊富で分泌量も多いうえ、汗による蒸れや衣類との接触など、皮膚への刺激が加わりやすいことも関係すると考えられています。
なぜ粉瘤ができるのか
なぜ皮下に袋が作られるのかについては、まだ十分に分かっていません。毛穴の閉塞をはじめ、ケガや慢性的な炎症、皮脂分泌の異常、遺伝的な影響など、複数の要素が関与すると言われています。何らかのきっかけで表皮が皮膚の奥へ入り込むと、そこで嚢状の組織が作られ、粉瘤の形成に繋がると言われています。
粉瘤の特徴
外から確認できるサイン
炎症を起こしていない段階では、痛みや赤みがないまま皮膚が半球状に盛り上がります。サイズは小豆程度から鶏卵ほどまで幅があり、触れると皮下にしこりを感じます。
もう1つの特徴が、中央に現れることのある黒い点です。これは袋と皮膚表面を繋ぐ開口部にあたります。
主な症状
粉瘤はそのまま消えていく病変ではなく、内部に角質や皮脂が増えるにつれて、しこりも大きくなる傾向があります。開口部を圧迫すると、白色からクリーム色の内容物が出て、特有の臭いを伴う場合があります。ただし、中身が外へ出ても皮下の袋まではなくならないため、粉瘤そのものが治ったわけではありません。
赤みや痛みが出たら炎症性粉瘤の可能性
無症状だった粉瘤に細菌感染が加わると、炎症性粉瘤へと変化します。それまでとは異なり、患部が赤く膨らみ、熱を持ったり強く痛んだりします。化膿すれば内部に膿が溜まり、臭気が強くなることもあります。炎症がさらに進むと、袋が壊れて内容物が周囲の皮下脂肪へ漏れ出し、症状が増悪する場合があります。
脂肪腫の詳細
脂肪腫とは
脂肪腫では、粉瘤のような袋に老廃物が溜まるのではなく、脂肪細胞そのものが増えて腫瘤を作ります。「リポーマ」の名称でも知られ、軟部組織に発生する良性腫瘍のなかでは最も多いタイプです。
発生部位は脂肪組織のある場所全般に及びますが、特に背中、肩、首の後ろ、臀部、大腿部などでよく見られます。40〜60歳代で多く、男性がわずかに多い傾向があります。肥満、高脂血症、糖尿病との関連を示すデータもあります。
なぜ脂肪腫ができるのか
脂肪腫が作られる詳しい過程についても、現在までに明確な結論は出ていません。
一方、衣類や下着から繰り返し圧迫・摩擦を受ける場所で見られやすいことから、日常的な刺激との関連が指摘されています。また、一部では染色体異常が確認されており、遺伝子が発症に影響する可能性も考えられています。
脂肪腫の特徴
外から確認できるサイン
脂肪腫は数mm程度の小さなものから、10cmを超える大きなものまで様々です。皮膚をなだらかに押し上げるように膨らみ、指で触れると柔らかく弾力があります。また、押した際に皮下で動くこともあります。
主な症状
増大するスピードは比較的緩やかで、多くは痛みやかゆみを伴いません。そのため、しこりだけが長期間残っているケースもあり、自然に消失することはありません。粉瘤とは異なり、通常は中央に黒い開口部がなく、特有の臭いもありません。また、炎症が生じにくい点も両者を見分ける材料になります。
脂肪腫の種類
単純性脂肪腫
最も多く見られる脂肪腫です。被膜の内側に、膠原線維を含んだ脂肪細胞が存在します。触れると柔らかく、通常は痛みを感じません。
血管脂肪腫
脂肪細胞の間に毛細血管を多く含みます。発生しやすい場所は背部、腹部、上肢、下肢などです。やや硬いしこりとして触れることがあり、痛みが出る場合があります。
筋肉内脂肪腫
皮下ではなく筋肉の内部に位置し、周囲の筋線維へ入り込むような広がり方をします。この性質から、指で押しても動きにくい場合があります。また、摘出後の再発についても注意が必要なタイプです。
脂肪腫の初期診断の重要性
脂肪腫は良性であるため、症状がなければ経過を観察する選択肢もあります。
ただし、長く経過を見る間にも腫瘍が成長することがあります。サイズが増せば摘出時に必要となる処置も大きくなり、それに伴って傷跡が目立ちやすくなります。さらに、発生した位置によっては神経が圧迫され、痛みや痺れの原因になることもあります。
また、悪性腫瘍との鑑別が必要なものもあります。診断を受けないまま長期間放置すると、その確認が遅れる可能性があります。
背中のデキモノは何科を受診すべき?
受診先は、デキモノの種類や治療内容によって異なります。
皮膚科
赤みや発疹が中心で、ニキビや毛嚢炎が疑われる場合は皮膚科で診療します。症状に応じて塗り薬や内服薬を使用し、炎症の改善を図ります。診察の結果、粉瘤や脂肪腫など摘出が必要な病変と判断された場合は、形成外科での治療を案内されることもあります。
形成外科
皮下に残るしこりを手術で取り除く治療は、形成外科の診療領域です。粉瘤や脂肪腫の摘出にも対応します。しこりが大きくなっている場合や、粉瘤の炎症を何度も繰り返している場合などは、形成外科への受診を検討しましょう。
当院で行う背中のデキモノに対する治療
粉瘤や脂肪腫を根本的に取り除くには、手術が必要です。当院では、しこりの種類や大きさ、炎症の程度などを確認したうえで術式を選択します。
くり抜き法
粉瘤に小さな穴を開け、そこから内容物と袋を摘出する術式です。切開範囲を抑えられるため、傷跡が比較的小さく済む利点があります。
一方、粉瘤のサイズや炎症の状態によっては、くり抜き法が適さないケースもあります。
切開法
病変の周囲を切開し、粉瘤の袋や脂肪腫を摘出します。特に粉瘤では、再発を防ぐため袋を残さないことが重要です。サイズが大きい場合や何度も再発するケースなどでは、切開法が選択肢となります。
背中のデキモノに関するよくある質問
Q.背中のデキモノが気になっています。市販薬で治りますか?
A.粉瘤や脂肪腫そのものを、市販薬でなくすことはできません。炎症に対してお薬を用いることはありますが、皮下のしこりを取り除く治療とは異なります。自己判断で長く様子を見ず、受診できるタイミングで医師の診察を受けましょう。
Q.背中のデキモノをなるべく痛みがなく、跡が残らないように治療できますか?
A.粉瘤や脂肪腫の根治には、基本的に手術による摘出が必要です。通常は局所麻酔を使用するため、麻酔注射では痛みを感じるものの、術中の痛みは抑えられます。
粉瘤では、小さな穴から摘出する「くり抜き法」を選べる場合もあります。病変の状態に合わせて術式を選ぶことで、傷跡をできるだけ小さくすることが可能です。
Q.背中のデキモノが大きくなっていますが、がんの可能性はありますか?
A.粉瘤や脂肪腫は良性腫瘍であり、通常それ自体が悪性腫瘍へ変化するものではありません。ただし、初めから脂肪肉腫など別の腫瘍である可能性については鑑別が必要です。
急速な増大、硬さ、表面の不整、皮膚の色調変化などがある場合は注意が必要です。また、良性でも大きくなったり炎症を繰り返したりすれば、痛みが出て日常生活に影響が出る恐れがあります。変化や症状があるしこりは、医療機関で診断を受けることが大切です。
