眼瞼下垂症とは、上瞼が垂れ下がって目が開きにくくなる病気で、根本治療のためには手術が必要です。手術療法には大きく「眼瞼下垂手術」と「眉下切開法」とがあります。
「眼瞼挙筋(がんけんきょきん)」と呼ばれる目の開閉を司る筋肉が弱って目が開きにくい場合は「眼瞼下垂手術」が、目の開き方自体は悪くないけれども、瞼の皮膚に余剰があって厚く重たくなり、たるみが生じているような場合には「眉下切開法」が適しています。
眼瞼下垂手術はさらに、眼瞼挙筋がまだ機能している場合に行う「眼瞼挙筋腱膜前転術」「眼瞼挙筋短縮術」と、眼瞼挙筋が全く動かなくなっている場合に行う「前頭筋吊り上げ術」とに分けられます。
眼瞼下垂手術は瞼の皮膚を切開するため目の近くでメスを振るうことになるので、患者様が怖いと感じられることがあります。また、術後に瞼の皮膚が薄くなったり目の開き方が変わったりするため、見た目の印象が変わる可能性もあります。そのため、多くの患者様が「眉下切開法」の方を選ばれる傾向にあります。
しかし、果たして自分の症状の場合はどちらの手術治療法が適しているのか、一般の方では判断に迷い、悩ましいところです。
そこで、ここでは患者様が手術療法を検討される際の参考にして頂くため、眉下切開と眼瞼下垂手術それぞれの特徴、適用症例やリスク・副作用などについて詳しく解説していきます。
※当院では筋肉性の眼瞼下垂への手術は行っておりません。診断の結果、難しい症例の治療が必要な方は近隣の大学病院を紹介いたします。
●眉下切開について
眉下切開は、上瞼の皮膚が厚く重たい方や、上瞼の皮膚にたるみが生じている方に適用される手術で、その特徴や適応症例は以下の通りです。
【眉下切開の特徴】
眉下切開は、上瞼の皮膚を眉毛のすぐ下側から切開し、余分な皮膚を取り除くことで、上瞼のたるみを改善する治療法です。
皮膚だけでなく、内部の余分な筋肉や脂肪も同時に処理することがあります。日帰り手術が可能で、切開で生じた傷は眉毛の中や下に隠れるよう縫合を行うので、術後の傷口はあまり目立たちません。
眉毛の位置や目の形は変わらず、全体として違和感のない仕上がりとなります。たるみによって狭くなっていた二重幅が、自然な感じで広くなる効果もあります。
【眉下切開の適応症例】
眉下切開は、加齢による上瞼の重み・たるみ、視界不良などにお悩みの方にお勧めです。
【眉下切開のリスク・副作用】
内出血、痛み、むくみ、傷跡、皮膚の盛り上がり、左右差、シワの出現など
●眼瞼下垂手術について
【眼瞼下垂手術の特徴】
眼瞼下垂手術は、先天的、あるいは加齢などの原因で後天的に上瞼が垂れ下がり、視野が遮られる状態を改善する手術です。瞼を開く筋肉である眼瞼挙筋を縫い縮めるなどして調整することで、目の開きを良くすることが可能となります。
眠そうに見える目が開いて、縦方向に大きくすることができるため、美容目的の効果もあります。
【眼瞼下垂手術の適応症例】
眼瞼下垂手術は、上瞼のたるみや上まつ毛の生え際の垂れ下がりで視野が狭い方、目の開きを改善したい方、肩こり・眼精疲労・頭痛に悩まされている方などにお勧めです。
【眼瞼下垂施術のリスク・副作用】
内出血、痛み、むくみ、傷跡、兎眼、左右差、ドライアイなど
●眉下切開と眼瞼下垂手術の相違点
眉下切開と眼瞼下垂手術それぞれの切開位置と方法、改善できる症状、ダウンタイムの違いについて、詳しく解説していきます。
【切開位置と方法】
眉下切開
眉毛のすぐ下側を切開して上瞼の余分な皮膚を取り除くことで、瞼のたるみを取り、目の開きを良くします。
切開で生じた傷は眉毛の中や下に隠れるよう縫合を行うので、術後の傷口はあまり目立たちません。眉毛の位置や目の形は変わらないので、全体として違和感のない仕上がりとなります。
眼瞼下垂手術
眼瞼下垂の手術では、二重瞼のライン付近を切開すると同時に眼瞼挙筋を縫い縮めるなどして調整するので、目の開きを良くすることができます。
手術直後は腫れや赤みが生じ、切開した部分の傷が目立つ場合がありますが、最終的には自然な形に仕上がります。
※当院では筋肉性の眼瞼下垂への手術は行っておりません。診断の結果、難しい症例の治療が必要な方は近隣の大学病院を紹介いたします。
【解消できる症状】
眉下切開
上瞼の重さが改善し、目元のたるみが解消します。
また、瞼の重みによって狭くなっていた二重の幅が広くなり、目と眉毛の距離も縮むため、若々しい目元になる効果もあります。
眼瞼下垂手術
症状の原因となる筋肉や腱膜の異常に対して直接的な修正を行い、その結果、上瞼の開きが良くなるだけでなく、視野が広がる、眼精疲労が改善するなど機能面での改善も期待できる手術です。
【ダウンタイム】
眉下切開
腫れは術後翌日がピークとなり1週間程度で落ち着き、抜糸が可能となります。内出血も1〜2週間程度で吸収されていきます。
眉毛のラインに沿って切開するため術後の傷跡は目立ちにくく、傷の部分を除いてメイクも翌日からできます。
眼瞼下垂手術
腫れや内出血は1〜2週間で落ち着きます。
完治には3〜6ヶ月程度かかりますが、傷跡はほとんど目立たなくなります。
●眉下切開と眼瞼下垂手術のメリット・デメリット
眉下切開と眼瞼下垂手術のメリットとデメリットは以下の通りです。
眉下切開
メリット
自然な見た目で上瞼や目元のたるみが解消され、狭くなっていた二重の幅が広くなります。手術後の傷跡も眉毛に隠れるため目立ちにくくなります。
ダウンタイムが少なく、目と眉毛の距離も縮むため、若々しい目元になる効果もあります。
デメリット
瞼のたるみ解消という美容目的で行う手術であるため健康保険が適用されないので、費用面については注意が必要です。
手術中の切開位置が少しでも眉毛からはみ出してしまうと、術後に傷口が目立つようになってしまうことがありますが、当院では技術力と実績を十分に備えた医師が治療に当たり、患者様に安心して頂ける手術を行っています。
眼瞼下垂手術
メリット
「瞼が開けにくいために日常生活に支障がある」「瞼が下がって視野が狭くなっている」など中等度・重度の眼瞼下垂がある場合、保険が適用されます。
手術により視野が広がる、眼精疲労が改善するなど、機能面での根本的な改善が期待できます。
デメリット
眼瞼下垂手術は、二重の幅が狭くなる、左右差が生じるなどの見た目や印象が変化する可能性があります。
瞼を切開するため術後に腫れや内出血が生じ、個人差はありますが、細かな腫れが引くまで3〜6ヶ月程度かかることがあります。
●眉下切開と眼瞼下垂手術のリスク・副作用・注意事項
眉下切開のリスク・副作用・注意事項
眉下切開の術後には、痛み、腫れ、むくみ、内出血などの副作用が1〜2週間続く場合があります。
傷口から感染症にかかったり傷跡が残ったりするリスクもありますので、ダウンタイム中の傷口のケアには十分に注意する必要があります。
眼瞼下垂手術のリスク・副作用・注意事項
眼瞼下垂手術の副作用には、腫れ、内出血、涙目、一時的な視界不良などがあります。
また手術後の感染症罹患、ドライアイ涙目などの発症、痙攣、さらには目の開きに左右差が生じる、二重幅が狭くなる、瞼を完全に閉じることができない(兎眼)など、見た目が不自然になるリスクもあります。
患者様におかれましては、医師と相談し、こうしたリスク・副作用について十分に理解した上で施術に臨むことが重要です。
●眉下切開手術と眼瞼下垂手術の保険適用について
厚生労働省が定める疾患に対し、保険医療機関が規定の診療をする際は健康保険の適用対象となり3割負担で済みますが、シワ取りや瞼のたるみ改善など審美目的の治療については自由診療となるため基本的に10割負担となります。
しかし、上瞼が持ち上がりにくい、余分な皮膚によって視野が狭くなっている、など日常生活に支障が出ている場合に眼瞼下垂手術を受ける場合には、保険診療が適用されます。
診療報酬点数表によると、眼瞼下垂症手術の診療報酬点数は下記の通りです。1点10円の計算となります。
眼瞼下垂症手術
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眼瞼挙筋前転法 7,200点
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筋膜移植法 18,530点
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その他のもの 6,070点
眉下切開法は「3 その他のもの」に該当しますので、3割負担の場合の手術費用は片眼につき18,200円(1割負担の場合、6,070円) です。
これ以外にも別途、術前検査費、短期滞在手術基本料、術後の診察代、薬剤の費用が合計で2〜3万円程度(3割負担の場合)必要となります。
※当院での保険適用の有無については診断後の判断となります(症状のない方は自費診療)。難しい症例の治療が必要な方は近隣の大学病院を紹介いたします。
●眉下切開と眼瞼下垂手術をどちらにすべきか判断するには医師に相談しましょう
眉下切開法と眼瞼下垂手術のどちらを受けるのが適切かを自己判断で決めることは難しいため、専門医に相談することをお勧めします。
自己判断が困難
患者様がご自分の上瞼の症状を鏡で見て、単なる目元のたるみなのか、眼瞼下垂なのかを判断することは、専門知識がない分、非常に困難なことです。
また、眼瞼下垂が軽度の場合や、長期間にわたって両眼同時に進行した場合などは、なかなか気づかない患者様が多いです。
専門的な意見を聞くために医師に相談しましょう
眼瞼下垂症の適切な治療方法を選択するに当たっては、専門医に相談することが一番です。
当院では、医師が患者様個々の症状を詳細に診断し、症状の程度や原因を正確に判断した上で、ライフスタイルも含めたご希望を丁寧なカウンセリングを通じて伺いながら、眉下切開法と眼瞼下垂手術の選択について専門的な見地からアドバイスいたします。お気軽にお問合せください。
●眉下切開法と眼瞼下垂手術の同時施術
眼瞼下垂症の改善に際して、必ずしも眼瞼下垂症手術と眉下切開法のどちらか一方を選択しなければならないということではなく、症状によっては両方を同時に受けることも可能です。
【眉下切開と眼瞼下垂症手術はどちらを優先すべき?】
眼瞼下垂手術と眉下切開法を行う順番は、患者様の症状やご希望などによって異なります。
眼瞼下垂が軽度で、瞼を開く力が弱いことが瞼の皮膚のたるみの原因である場合は、先に眉下切開法を行います。
眼瞼下垂と瞼のたるみの両方があるケースで、眼瞼挙筋の動きが明らかに弱い場合は、先に眼瞼下垂手術を行うのが一般的です。
●よくある質問
Q.眉下切開法の効果の持続期間はどのくらいですか?
たるみ改善のために眉下切開法を行った場合、日焼けや摩擦に注意することで、数年間はその効果が持続します。
加齢に伴って再度たるみが生じる可能性もありますので、効果が永続するというわけではありません。
Q.眉下切開をすることで眉毛の位置は変わりますか?
眉毛の位置が下がる可能性はありますが、たるみを取り過ぎないよう適切な技術で眉下切開法を行うことで、自然な見え方となります。
手術後の見え方については、事前のカウンセリングの際に医師とよくご相談ください。
Q.眉下切開法と眼瞼下垂施術の同時施術は可能ですか?
患者様の症状によっては、同時施術でより高い治療効果が得られることがありますので、適切な手術法を医師とよくご相談ください。
ただし、場合によっては腫れがひどくなったり、長引いたりする可能性もあります。