
「膨らみが気になるので、自分で中身を出してしまいたい」「針で穴を開ければ小さくなるのでは」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、粉瘤をご自身で摘出することはお勧めできません。粉瘤は、中に溜まったものを排出すれば治る病気ではないからです。無理に潰したり、針を刺したりすると、一時的に小さくなったように見えても、再び膨らむ可能性があります。インターネットでは「自分で粉瘤を取った」という情報を目にすることがありますが、見た目だけでは適切に処置できたかどうかは判断できません。
ここでは、なぜ粉瘤を自力で摘出することが難しいのか、自己処置によってどのような問題が起こり得るのかなどについて解説します。
粉瘤とはどのような病気?
粉瘤は、皮膚の内側に袋状の構造が形成され、その内部に角質などが徐々に蓄積していく良性の皮膚腫瘍です。「アテローム」「アテローマ」と呼ばれることもあり、代表的なものとして表皮嚢腫があります。
皮膚の表面を構成する表皮と同じような組織が皮膚の内部に袋を作り、その内側では角質が作られ続けます。排出されずに溜まった角質が増えるにつれて、皮膚の下のしこりも次第に大きくなっていきます
中身を摘出しても粉瘤が治ってはいません
粉瘤を治療するうえで重要なのは、膨らみの原因となっている内容物だけではなく、それを作り出す袋状の組織にも目を向けることです。
強く押したり針で穴を開けたりすれば、内部の角質が外へ出て、しこりが小さくなることはあります。しかし、袋が残存すれば、その内側では再び角質が作られます。時間の経過とともに内容物が蓄積し、同じ場所が再び膨らんでくる可能性があります。
イメージとしては、中身だけを取り除いても、それを作り出す「入れ物」が皮膚の下に残っている状態です。根治を目指す場合には、基本的にこの袋状の組織を含めて外科的に摘出する必要があります。
粉瘤を自分で摘出することで生じる5つのリスク
細菌感染のリスク
皮膚には、健康な状態でも様々な細菌が存在しています。針などを使って皮膚に傷をつければ、本来は皮膚表面にいる細菌が内部へ侵入するきっかけになります。
感染や炎症が生じると、それまで痛みのなかった粉瘤でも、赤く腫れたり、触れただけで痛んだりするようになることがあります。
感染拡大のリスク
皮膚や皮下組織へ感染が拡大すると、広い範囲が赤く腫れて痛む「蜂窩織炎」を引き起こすことがあります。感染の程度によっては抗生物質による治療が必要となり、重症の場合には点滴治療が検討されることもあります。
炎症が悪化するリスク
粉瘤を強く圧迫した結果、中に蓄積していた角質が周囲の組織へ漏れ出すことがあります。体はこの内容物を異物として認識するため、強い炎症反応が引き起こされる場合があります。状態によっては切開して内容物や膿を排出する処置が必要になることもあります。
色素沈着などの見た目上のリスク
自己処置によって炎症が悪化すると、炎症後の赤みや色素沈着が長く残ったり、瘢痕によって皮膚に凹凸が生じたりするリスクが高まります。特に顔や首など人目につきやすい場所にできた粉瘤は、触りたくなることもありますので注意しましょう。
再発リスク
内容物だけを押し出しても、袋が残っていれば根本的な解決にはなりません。潰す・腫れる・治まるという経過を繰り返すと、周囲の組織に炎症や瘢痕による癒着が生じる場合があります。このような変化が起こると、外科的な治療が難しくなることがあります。
「自分で取れた」という情報を鵜呑みにしないでください
SNSや知恵袋などでは、「粉瘤を自分で取った」といった体験談を見かけることがあります。
しかし、外から内容物が出たことと、粉瘤そのものがなくなったことは同じではありません。袋が皮膚の下に残っていれば、再び内容物が溜まる可能性があります。
また、他の人が問題なく処置できたように見えても、自分にも同じ結果が得られるとは限りません。しこりの大きさや位置、炎症の程度は1人ひとり異なりますし、見た目だけで粉瘤と判断できない皮膚病変もあります。
粉瘤が自然に破れたときはどうすればよい?
炎症を起こした粉瘤では、内部に溜まった内容物や膿によって圧力が高まり、何もしていなくても皮膚が破れて排出されることがあります。このような場合も、「中身が出たから治った」と判断するのは禁物です。炎症や感染が残っている可能性があるほか、袋が皮膚の下に残存していることもあります。まずは患部を清潔に保ち、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。
自宅では、患部を流水でやさしく洗い、清潔なガーゼなどで覆って保護します。強い刺激のある消毒薬を自己判断で傷口に繰り返し使用すると、組織を傷めて創傷治癒を妨げる可能性があるため注意が必要です。
自然に内容物が出てきた場合でも、指で強く押して「全部出し切ろう」とする必要はありません。無理な圧迫によって周囲の組織を傷つけた場合、炎症が悪化する恐れがあります。
医療機関では、患部の状態を確認したうえで、必要に応じて洗浄や排膿などの処置を行います。強い炎症がある時期は、まず炎症に対する治療を優先し、状態が落ち着いてから改めて粉瘤の摘出を検討する場合があります。
粉瘤を根治には袋の摘出が必要です
粉瘤の根治を目指す場合には、袋を含めて外科的に摘出することが基本となります。粉瘤の代表的な手術方法には「切開法」と「くり抜き法(へそ抜き法)」があります。術式は、粉瘤の大きさやできた場所、炎症の有無、周囲組織との癒着などを確認したうえで判断します。
切開法
切開法では、粉瘤の周囲の皮膚を木の葉型に切開し、袋を周囲の組織から丁寧に剥離して摘出します。その後、切開部分を縫合して傷口を閉じます。
袋を確認しながら摘出できることが特徴で、再発する可能性を低く抑えられます。
一方、粉瘤の状態によっては皮膚をある程度切開する必要があるため、くり抜き法と比べて傷が長くなる場合があります。
くり抜き法
くり抜き法では、円筒状の器具を用いて粉瘤の開口部を中心に小さく皮膚をくり抜き、そこから内部の角質を排出したうえで袋を摘出します。
切開する範囲を小さくできることが大きな特徴で、粉瘤の大きさや部位によっては、縫合せず自然に傷口が閉じるのを待つこともあります。
ただし、周囲との癒着が強くなっている場合や、大きさ・発生部位などによっては、袋の摘出が難しくなることがあります。
粉瘤は小さいうちに治療を検討することが大切です
粉瘤は自然に消失することはほとんどなく、袋の内側では角質が作られ続けるため、長い経過のなかで徐々に大きくなることがあります。
サイズが増すほど、摘出に必要な処置の範囲も大きくなる可能性があります。結果として傷が長くなったり、術後の傷跡が目立ちやすくなったりすることもあります。
さらに注意したいのが炎症です。粉瘤に炎症が起こると、赤みや腫れ、熱感、痛みなどが現れ、膿が溜まることもあります。内容物が外へ排出された際には、特有のにおいを伴う場合もあります。
今後の治療を考えている場合には、大きくなったり炎症を繰り返したりする前に当院へご相談ください。
このような症状があれば早めにご相談ください
- 自分で摘出した後から、膿や血液が出続けている
- しこりが突然赤く腫れ、痛みや熱感が出てきた
- しこりが硬くなった、あるいは周囲まで硬く感じる
- 以前と比べて明らかに大きくなっている
- 同じ場所で腫れや痛みを何度も繰り返している
- 顔や首など、傷跡が目立ちやすい場所にできている
- 発熱や強い倦怠感など、患部以外の症状も現れている
まとめ
粉瘤を見つけたときに最も避けたいのは、自分で摘出する行為です。
一時的にしこりが小さくなったとしても、皮膚の下に袋が残っていれば再び膨らむ可能性があります。さらに、自己処置による傷から細菌が侵入したり、袋が破れて強い炎症を起こしたりすれば、本来よりも治療が複雑になることがあります。
粉瘤を根本的に治療するには、内容物だけではなく袋を含めて摘出することが重要です。また、小さい段階で治療できれば、状態によっては傷を比較的小さく抑えられる可能性もあります。
当院では、専門的な知識と経験をもとに粉瘤の状態を確認し、状態を踏まえて治療方針をご提案します。粉瘤について気になる症状がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
Q.粉瘤を自分で摘出できますか?
A.ご自身で粉瘤を完全に取り除くことは困難です。指で押したり針を刺したりすると、中に溜まった角質が排出され、しこりが小さくなる場合があります。しかし、袋が残っていれば再び内容物が溜まり、しこりが大きくなる可能性があります。さらに自己処置は感染や炎症、傷跡の原因にもなるため避けてください。
Q.「自分で粉瘤を取れた」という情報をネットで見かけました。
A.内容物がまとまって排出されると、「粉瘤そのものが取れた」と感じることがあります。しかし、外へ出てきたものだけを見て、袋まで完全に取り除けたかどうかを判断することはできません。また、インターネット上の体験談とご自身のしこりが同じ病変である保証もありません。自己処置ではなく、医療機関で診断を受けましょう。
Q.粉瘤を潰してしまいました。病院へ行くべきでしょうか?
A.医療機関で状態を確認してもらいましょう。特に、赤みや腫れ、熱感、痛み、膿などが現れている場合には炎症や感染を起こしている可能性があるため、早めに受診してください。
Q.粉瘤を根本的に治すには、どのような治療が必要ですか?
A.根治を目指す場合は、粉瘤を形成している袋を外科的に摘出します。局所麻酔による日帰り手術が可能なケースも多くありますが、実際の治療方法や通院回数などは病変や医療機関によって異なるため、診察時に確認してください。
Q.市販の塗り薬や飲み薬で粉瘤はなくなりますか?
A.炎症に伴う症状がある場合には薬物療法が用いられることもありますが、粉瘤そのものを消失させることはできません。粉瘤を完全に治すには外科手術による袋の摘出が必要です。
