眼瞼下垂手術後のダウンタイムを短くするために行うべきことを経過順に解説!

眼瞼下垂症の手術を数多く経験する中で、術後の腫れの程度には個人差があることが分かってきました。なかには、ほとんど腫れが目立たずに済む方もいれば、逆に強い腫れがしばらく続く方もいらっしゃいます。

これは言い換えれば、「ダウンタイム」、つまり日常生活に支障がなくなるまでの回復期間が、短く済む方と長引く方に分かれるということです。

誰しも、手術後の生活に早く戻れるに越したことはありません。ダウンタイムが少ないほど、安心して社会生活を再開できることでしょう。

今回は、このダウンタイムをできるだけ短くするために、術後に患者様ご自身で取り組むべきこと、そして避けるべき行動について、詳しくご紹介いたします。

眼瞼下垂とは

眼瞼下垂は、瞼が正常な位置よりも垂れ下がってしまい、目が開けにくくなる状態を指します。この症状は、瞼を持ち上げる筋肉や腱に何らかの障害が生じることで起こり、意識的に瞼を開こうとしても開きづらくなってしまうのが特徴です。

視野が狭まることに加え、見た目には常に眠たそうな印象を与えることがあります。また、無意識に額の筋肉を使って瞼を引き上げようとするため、肩こりや頭痛に繋がることも少なくありません。

原因は様々ですが、最も一般的なのは加齢による瞼の筋力や支持構造の衰えです。さらに近年では、若い世代でも長期間のコンタクトレンズ使用により、眼瞼下垂を発症するケースが増えています。

眼瞼下垂の主な症状

  • 瞼が重たく感じ、目が開きにくい
  • 年齢とともに瞼が垂れ下がってきた
  • 上方の視界が見づらくなった
  • 表情が常に眠そうに見える
  • 眉毛の位置が上がり、目と眉の距離が広がった
  • 額の筋肉を使うことでおでこにシワが増える
  • 肩こりや頭痛が続く(額の筋肉の緊張による)

眼瞼下垂の原因と分類

眼瞼下垂は、原因によって以下の3つのタイプに分類されます。

先天性眼瞼下垂

生まれつき、瞼を引き上げる「眼瞼挙筋」がうまく機能していない状態です。片側のみに起こることが多く、左右差が目立つ場合は視力発達に影響を及ぼす可能性があります。特に弱視や斜視のリスクがあるため、重症の場合は幼少期のうちに手術を検討することが重要です。

後天性眼瞼下垂

成人以降に起こる眼瞼下垂の大半はこのタイプで、加齢によって挙筋腱膜やミュラー筋が徐々に緩み、瞼が下がってきます。これは「腱膜性眼瞼下垂」とも呼ばれます。

また、以下のような要因も後天性眼瞼下垂の原因となることがあります。

  • アレルギー性結膜炎やアイプチなどによる瞼への刺激
  • コンタクトレンズの長年の装用や着脱時の摩擦
  • 糖尿病による外眼筋麻痺
  • 重症筋無力症や脳動脈瘤による神経の障害

偽性眼瞼下垂

瞼を動かす筋肉や腱には問題がないものの、皮膚のたるみが原因で瞼が垂れ下がってしまう状態を「偽性眼瞼下垂」と呼びます。こちらも見た目には瞼が重くなり、視野の狭まりやおでこのシワ、肩こり・頭痛といった症状が現れるため、通常の眼瞼下垂とほぼ同様の不快感を引き起こします。

眼瞼下垂手術後のダウンタイム中に起こり得る不調

眼瞼下垂の手術を受けた後、一時的に瞼の腫れや目の違和感を覚えることがあります。こうした症状の多くは時間の経過とともに自然に治まりますが、稀に修正手術が必要となるケースも存在します。

術後の経過や症状の現れ方には個人差があり、まったくトラブルが出ない方もいれば、軽度の症状が数週間続く方もいらっしゃいます。当院では、こうした術後のリスクを最小限に抑えるため、できる限り丁寧かつ繊細な手術を行っています。

以下に、術後によく見られる症状とその概要をご紹介します。

瞼の腫れ

手術中に麻酔を注射したり、縫合のために糸や針を通したりすることが原因で、術後しばらくは瞼に腫れが生じやすくなります。

この腫れは、多くの場合、泣いた直後のような軽度なもので、術後数日から1週間ほどで自然に落ち着いていきます。見た目の変化はあるものの、通常は一時的な反応と考えて差し支えありません。

内出血

切開部や縫合部を中心に、青紫色の内出血が出現することがあります。これは皮膚の下で血液が広がることによるもので、術式や体質により程度は異なります。

時間の経過とともに血の色は変化し、次第に目立たなくなっていくのが一般的です。ほとんどの場合、長くても1ヶ月以内には自然に吸収され、元の状態に戻ります。

涙目

術後は瞼がしっかり開くようになるため、これまでよりも目に光が入りやすくなります。日光や蛍光灯などの光をまぶしく感じやすくなり、それに反応して涙が出やすくなることがあります。

ドライアイ

手術により瞼が開きやすくなることで、眼球の表面積が広がり、涙の蒸発量が増えることがあります。その結果として目が乾きやすくなり、ドライアイのような症状が現れることがあります。

目やにの増加

術後は目に一時的な負担がかかるため、防御反応として目やにが出やすくなる場合があります。これは生体の自然な反応であり、多くの場合は1ヶ月ほどで自然に落ち着いていきます。

瞼が閉じにくくなる

瞼の開きが改善される一方で、人によっては目を閉じる動作がしづらくなることがあります。なかには、睡眠中も瞼が完全には閉じず、うっすら開いた状態になることもあります。こうした状態が長期間続いたり、明らかな過矯正が見られる場合には、修正手術を検討することがあります。

左右差

片目のみ手術を行った場合には、術後に左右の目の形や開き方に差が出ることがあります。また、両目を同時に手術した場合でも、腫れ方の違いによって、一時的に二重の幅や目の大きさに左右差が生じることがあります。

通常は術後数週間のうちに腫れが引き、左右のバランスが整ってきますが、それでも差が目立つ場合には、再手術による調整が必要になることもあります。

なお、元々瞼を引き上げる筋力に左右差がある方は、医師が慎重にバランスを見て手術を行っても、時間の経過とともに差が強調されてくることがあります。そうした場合にも、必要に応じて修正を検討します。

瞼の感覚が一時的に鈍くなる

瞼には細かい神経が分布しており、手術で皮膚を切開する際にその末梢神経が一時的に傷つくことがあります。その結果、術後に痺れを感じたり、瞼の感覚が鈍くなることがあります。

この症状は一時的なもので、多くは3〜6ヶ月程度で自然に回復します。

ただし、感覚の違和感が気になるあまり、瞼を無意識に触ったり、皮膚を引っ張ったりしてしまう方もいます。こうした行動は瞼の回復を妨げたり、組織にダメージを与える原因となりますので、極力避けるようにしましょう。

目元のつっぱり感

手術後に瞼が腫れると、その腫れによって皮膚が引っ張られるような「つっぱり感」を覚えることがあります。また、手術によって皮膚の一部を切除した場合、周囲の皮膚が引き寄せられることでつっぱるような感覚が一時的に生じることもあります。

目がゴロゴロする(異物感)

術後の腫れにより眼球が軽く圧迫されると、目の中に異物が入っているようなゴロゴロ感を覚えることがあります。また、手術時に使用した縫合糸が瞼の裏側に軽い圧迫を加えることで、違和感の原因となることもあります。

このような異物感は通常、術後2週間ほどで自然に軽減します。

さらに、眼球への圧迫によって角膜の形が一時的に変化し、視界がぼやけることがありますが、多くは術後3ヶ月程度で回復します。

瞼が再び下がってくる

手術によって改善された瞼の開きが、時間の経過とともに再び下がってくることがあります。主な原因としては、目を擦るなどの刺激によって挙筋腱膜が緩んでしまうケースが挙げられます。

また、術前に瞼を持ち上げる際に額の筋肉(前頭筋)を無意識に使っていた方が、手術後にその筋肉を使わなくなることで筋肉が緩み、結果として瞼の開きが弱くなることもあります。

当院では、このような再発リスクを最小限に抑えるよう、手術の設計と術後のフォローに十分配慮しております。

二重が三重になる

元々二重瞼だった方が、眼瞼下垂手術の後に三重瞼になることがあります。これは、皮膚のたるみが残っていたり、皮膚の切除が不十分だった場合に生じやすい現象です。

見た目の変化が気になる場合は、修正手術を検討することも可能です。

当院ではこうした事態を防ぐため、事前のデザインと切除範囲の調整を慎重に行っています。

縫合糸の露出

糸を用いた施術後に、目を擦るなどの刺激によって縫合糸が皮膚の外に出てくることがあります。糸が露出したまま放置すると、切れ端が眼球や瞼を傷つけるリスクがあるため、できるだけ早く医療機関で診察を受けてください。

また、露出した糸が気になって自分で引っ張ったり触れたりするのは危険です。必ず医師の判断のもとで適切な処置を受けましょう。

術後のダウンタイムを長引かせないために取り組むべくこと

手術当日〜2日後:術後すぐは「徹底した冷却」と「安静」が重要

眼瞼下垂手術を受けた直後から2日目までは、術後の経過を大きく左右する重要な時期です。この期間に最も大切なのは、「瞼を冷やすこと」と「安静に過ごすこと」です。

この時期に血圧が上昇すると、手術部位の血流が増し、傷口からの出血リスクが高まります。運が悪い場合には、出血が止まらなくなり、翌日に止血処置や再縫合が必要になることもあります。

瞼の腫れは、手術によって生じた組織の損傷に対して体が反応する「炎症」によるものです。この炎症は、いわば体内で起こっている化学反応のようなもので、温めると反応が進み、冷やすと抑えられるという性質があります。

つまり、術後の腫れを最小限に抑えるためには、「どれだけ早く、しっかり冷却できるか」が極めて重要になります。冷却を怠れば、炎症が強くなり、腫れも強く出てしまう可能性が高まります。

術後の数日間は、体を温める行為は避けなければなりません。特に注意したいのが「入浴」です。手術当日に湯船に浸かるのは厳禁です。

湯船に入ると体温が上がり、血圧も上昇して血流が促進されます。これは瞼の傷口にとって大きな負担となり、腫れや出血を引き起こすリスクが高まります。最悪の場合、一晩中出血が止まらず、翌日の処置が必要になることもあるのです。

術後のシャワーは、低めの温度で短時間に留めるのが理想です。とにかく、術後2日間は「体を温めない」ことを最優先に考えてください。

術後~3ヶ月間:処方された内服を必ず服用する

手術後には、感染予防のために抗生剤などが処方されます。これらのお薬は、傷口の炎症や感染を防ぎ、回復をスムーズに進めるうえで非常に重要です。

医師の指示に従い、自己判断で中断せず、決められた期間きちんと飲み続けてください。

術後翌日〜術後16日目(抜糸後2日目):ステロイド軟膏を正しく塗布する

術後の翌日から抜糸後2日目(おおよそ術後16日目)までは、毎日ステロイド眼軟膏を瞼の傷に塗布する必要があります。

この目的は、「モイストヒーリング(湿潤療法)」と呼ばれる治癒促進法の一環です。近年では、創傷治療において「かさぶたを作らせず、湿った環境を保つこと」が、傷跡をきれいに残さないための標準的な方法とされています。

瞼はデリケートな部位のため、医療用の湿潤絆創膏などを使用することが難しく、代わりにステロイド眼軟膏を使って湿潤環境を維持します。しっかりと軟膏を塗ることで、傷が乾燥せずに治癒が進みやすくなります。

なお、軟膏が目に入っても安全ですが、一時的に視界がぼやけることがあります。煩わしく感じるかもしれませんが、治癒のためには継続して塗布することが大切です。

術後~:定期的な術後検査を受ける

術後の経過観察も非常に重要です。手術の仕上がりは、約8割が執刀医の技術に左右されますが、残りの2割は術後のケアにかかっているとも言われています。

どれほど丁寧な手術を行っても、術後の管理が不十分であれば、期待通りの結果が得られない可能性もあります。定期的な検査を通じて、傷の状態や瞼の動き、左右差などを確認し、必要があれば早期に対処することが大切です。

違和感や気になる点がある場合には、自己判断せず、必ず主治医に相談してください。

術後に避けるべき行動

手術後は、時間の経過とともに瞼の腫れや違和感が徐々に引いていきます。しかし、経過が順調であっても、無意識のうちに瞼に負担をかけてしまうような行動を取ると、ダウンタイムが長引いたり、腫れや内出血が悪化する原因になることがあります。

ここでは、眼瞼下垂の術後に「控えるべき行動」と、その理由についてご紹介します。

入浴

術後の回復を順調に進めるためには、しばらくの間、湯船への入浴を控えることが大切です。バスタブに浸かると全身の血行が促進されるため、手術部位の腫れが強くなったり、腫れが引くまでに時間がかかったりする可能性があります。

そのため、腫れが落ち着くまではシャワーのみの入浴に留めておくことをお勧めします。眼瞼下垂手術の翌日からシャワーや洗顔が可能になるケースもありますが、患部にお湯や水が直接触れないように十分注意してください。

また、髪を洗う際には、シャンプーや泡が瞼に流れてこないように配慮することが必要です。通常の入浴がいつから可能になるかについては、医師の判断を仰ぐようにしましょう。

飲酒

アルコールには体温を上昇させたり血行を促進させる作用があるため、術後に摂取すると目元の腫れや内出血が悪化する恐れがあります。こうした炎症反応を抑えるためにも、眼瞼下垂手術の後は飲酒を控えることが重要です。

特に術後1週間は、飲酒や喫煙を完全に控えてください。その後も、むくみや傷の治癒の遅れを防ぐため、1ヶ月程度はなるべく飲酒を避けるようにしましょう。職場の飲み会などに参加する場合も、ノンアルコールの飲み物を選ぶのが無難です。

激しい運動

手術後しばらくは、激しい運動を避けて安静に過ごすことが大切です。体を動かすと血流が増加し、瞼の腫れが悪化したり、ダウンタイムが長引いたりする原因となります。

また、運動によって額や顔に汗をかくと、その汗が瞼の傷口に触れて治癒を妨げることもあります。普段運動習慣がある方も、ダウンタイム中はウォーキングや軽いストレッチ程度に留め、無理をしないようにしましょう。ストレスが溜まるようであれば、自宅でできる趣味などで気分転換を図るのがお勧めです。

目を刺激する行為

術後の目元は非常にデリケートな状態にあるため、瞼を擦ったり触れたりする行為は避けてください。こうした刺激が腫れを悪化させるだけでなく、縫合した糸が切れてしまう危険性もあります。さらに瞼の組織にダメージが加わると、眼瞼下垂が再発する可能性も否定できません。

また、アイメイクも患部への刺激となるため、術後間もない時期は控えるようにしましょう。目元のメイクは一般的に抜糸が済んでから可能になることが多いですが、状態によってはさらに数日控える必要がある場合もあります。必ず医師に確認したうえで、アイラインやマスカラの使用を始めてください。どうしても目元を隠したい場合は、縁が太めの眼鏡やサングラスを活用するのも1つの方法です。

コンタクトレンズの使用

眼瞼下垂手術の後は、一定期間コンタクトレンズの使用を控える必要があります。術後の瞼はまだ回復途中であり、レンズの装着による刺激が炎症や不快感を引き起こす可能性があります。

使用を再開できる時期は手術の方法や個人の回復状況によって異なりますが、一般的には術後2週間から1ヶ月程度は装用を避けるように指示されることが多いです。それまでは眼鏡を使って通勤や通学を行い、目に余計な負担をかけないようにしましょう。再開の時期については、必ず主治医と相談してください。

よくある質問

Q.眼瞼下垂の手術を受けた後、どのくらいで仕事に復帰できますか?

A.通常、手術から1週間ほどで抜糸が行われます。術後の経過を良好に保つためには、抜糸までは飲酒を控えるなど、生活習慣にも注意を払う必要があります。

腫れについては、完全に気にならなくなるまで2週間〜1ヶ月ほどかかることが多く、術後1週間程度は他人から見ても瞼の腫れが分かる場合があります。そのため、職場や外出先では眼鏡をかけて目元を隠す方も少なくありません。

当院では腫れを最小限に抑えるよう丁寧な手術を心がけています。そのため、糸の存在や腫れをあまり気にされない方であれば、術後すぐに通勤や通学を再開されるケースもあります。復帰のタイミングには個人差があるため、不安な点があれば事前に主治医とご相談ください。

Q.術後の腫れがなかなか引かず、ダウンタイムが長引いているように感じるのですが…?

A.稀に、眼瞼下垂手術のダウンタイムが長引いてしまうことがあります。腫れが長期間続くと、二重のラインが不自然に広がったり、ラインそのものがぼやけたり歪んだりすることがあります。こうした症状は、術後に形成された瘢痕組織が影響している場合もあり、状態によっては再手術が必要になることもあります。

まずは以下のポイントを確認してください。

  • 傷口を無意識に触ったり、擦ったりしていませんか?
  • 処方された内服薬や外用薬を指示通り使用できていますか?
  • 冷却を適切に行えていますか?

また、鏡で瞼を頻繁にチェックしすぎてしまう方は、知らず知らずのうちに瞼に触れてしまう傾向があります。こうした行動は治癒を妨げる要因にもなるため、注意が必要です。気になる症状がある場合は、早めに医師にご相談頂くことをお勧めします。