
「最近なんとなく瞼の重さを感じる」といった経験はございませんか。眼瞼下垂は、瞼が下がって見づらくなる状態で、加齢だけでなく多様な原因によって発症します。
本記事では、眼瞼下垂を招きやすい方の傾向と、ご自宅で実践できる予防・対策方法を詳しくご紹介します。
なお、眼瞼下垂は一旦発症してしまうと自然回復は望めない疾患ですので、もしもご自身に該当する傾向が見られた場合には、今すぐにでも予防対策を開始してみてください。
そもそも眼瞼下垂とは?
眼瞼下垂とは、上瞼が下垂し、目を開けるのが難しくなる状態を指します。
原因としては、加齢や生活習慣などにより、瞼を持ち上げる眼瞼挙筋の機能低下や、挙筋腱膜の緩みが生じることで発症します。
この状態では、視野の制限によって物が見づらくなるだけでなく、眠そうな表情に見えるなど外見にも顕著な影響を及ぼします。
さらに、個人によって程度は異なりますが、眼精疲労、頭痛、肩こり、うつ病などの不調を伴う場合もあります。
症状が進行すると瞼が瞳孔の大部分を隠し、日常生活に著しく不便をもたらすリスクがあるため、眼瞼下垂の予防対策と早期の発見・治療が重要です。
眼瞼下垂の主な症状
- 瞼に重い感覚がある
- 目が開けるのが困難になる
- 視界が制限され、物が見えづらくなる
- 目つきが悪い印象を与える
- 眠そうな表情に見える
- 目の奥の痛みを感じる
- 涙が出る
- 眼精疲労が起こる
- 頭痛や肩こりが生じる
- うつ病を発症する
眼瞼下垂のリスクが高い方の特徴
眼瞼下垂発症の原因は様々ですが、以下では「年齢」「生活習慣」「遺伝的要因」の3つの視点から、発症リスクの高い方の特徴を解説します。
年齢
眼瞼下垂はどの年代でも発症する可能性がある疾患ですが、加齢によって瞼の筋肉(眼瞼挙筋)が機能低下を起こしたり、皮膚の弛緩が生じやすくなるため、中高年世代の方に頻繁に見られます。
韓国で実施された健康栄養調査によると、40歳以上における眼瞼下垂の発症率は13.5%で、年齢の上昇とともに発症率が高くなるとの結果が報告されました。さらに、発症率を年代別に分解していくと次の表のようになります。
| 年代 | 眼瞼下垂の発症率 |
| 40~49歳 | 5.4% |
| 50~59歳 | 11.6% |
| 60~69歳 | 19.8% |
| 70歳以上 | 32.8% |
特に70歳以上では、眼瞼下垂の発症率が32.8%に達しており、約3人に1人が症状を抱えている実態が明らかになっています。
このように、眼瞼下垂発症の主因が「加齢」にあることがよく分かります。
生活習慣
日々の生活で瞼に負荷がかかっていると、眼瞼下垂の発症リスクが上昇します。
アイプチやアイテープの使用、長時間のコンタクトレンズの装着(特にハードコンタクトレンズ)、濃いアイメイク、まつ毛エクステの装着などは、瞼の負担を高めます。
また、アトピー性皮膚炎や花粉症などに伴い、瞼を擦ったり掻いたりする習慣にも警戒しなくてはなりません。
このような生活習慣により、瞼への負担が少しずつ蓄積されると、挙筋腱膜の緩みや外れを引き起こし、眼瞼下垂を発症する危険があります。
遺伝的要因
眼瞼下垂は原因に応じて、加齢や生活習慣によって発症する「後天性眼瞼下垂」と、生来瞼を持ち上げる力が不十分な「先天性眼瞼下垂」とに大別されます。そして、先天性眼瞼下垂の一部には遺伝的要因が関与しているケースも認められ、家族内に先天性眼瞼下垂の人がいる場合、生まれてくるお子様も眼瞼下垂を発症する可能性があります。
しかし、眼瞼下垂が必ず遺伝するというわけではありません。先天性眼瞼下垂といっても、その大半は遺伝によるものではなく、偶発的に眼瞼挙筋の発達障害や動眼神経の障害が生じるために発症するものです。
なお、先天性眼瞼下垂の約8割は片側のみに発症する片眼性ですが、遺伝に起因するものは大部分が両眼性です。
眼瞼下垂の発症に関わる危険因子
眼瞼下垂を引き起こす危険因子(リスクファクター)は多岐にわたり、疾患、環境的要因、精神的要因、職業的リスクなどが考えられます。
これらの中には、生活習慣の改善や医療的なケアで予防可能なものもあるため、事前にリスクファクターを把握しておくことが重要です。
生活習慣病
高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は、眼瞼下垂のリスクを高めるとされています。
その繋がりや発症メカニズムが完全に解明されているわけではありませんが、生活習慣病の予防・改善が、眼瞼下垂の発症予防にも繋がる可能性があるので、十分な配慮が必要です。
高血圧
「高血圧」は、慢性的に血圧が上昇している状態です。通常は自覚症状がないのですが、放置すると動脈硬化や心疾患などの重篤な疾患を引き起こすリスクがあります。
高血圧の原因には遺伝的要因のほか、飲酒、過剰な塩分摂取、喫煙、ストレス、肥満などがあります。
糖尿病
「糖尿病」は、血糖値が上昇した状態が継続する疾患です。運動不足、過食・過飲、肥満などにより、インスリンの作用低下や分泌不足が生じ、血液中のブドウ糖(血糖)が増加することで発症します。一旦発症すると完治は困難で、多様な合併症を誘発する危険性があります。
悪化を防ぐには、食事療法や運動療法、薬物療法による血糖管理が必要です。
脂質異常症
「脂質異常症」は、血液中のコレステロールや中性脂肪が、基準値を上回っている状態のことを指します。進行すると動脈硬化症を併発する危険があり、心筋梗塞や脳梗塞などの発症リスクを上昇させます。
脂質異常症の主因は、暴飲暴食、運動不足、喫煙、ストレス、肥満などで、日常的に高カロリーな食事を摂取している方は特に要注意です。
食事療法や運動療法による生活習慣の改善が、治療には欠かせません。
環境的要因
スマートフォンやパソコンなどの長時間使用(VDT作業)が、眼精疲労や身体の疲労感を誘発し、眼瞼下垂の発症リスクを高める環境的要因になるとして、近年注目されています。
また、強い照明や紫外線などの光刺激、エアコンの風やほこりなどの機械的刺激も瞼に負担をかけ、眼瞼下垂の原因となる可能性があります。
精神的要因
瞼を支える筋肉の1つであるミュラー筋は自律神経と繋がっているため、精神的ストレスの蓄積により自律神経のバランスが崩れると、ミュラー筋が影響を受けて、眼瞼下垂を引き起こす可能性があります。
職業的リスク
屋外作業に従事している方は、室内作業の多いオフィスワーカーと比較すると、汗をかいたり顔が汚れたりするほか、紫外線にさらされることも多くなるため、瞼に負担がかかりやすく、眼瞼下垂を発症する危険性が高いとされています。
しかし、オフィスワーカーだからといって安心はできません。近年は、長時間のパソコン作業などによるVDT症候群で、眼瞼下垂の発症リスクが上昇しているからです。
眼瞼下垂の予防と対策
眼瞼下垂を一旦発症してしまうと、自力で治療することは極めて困難であり、完治させるためには手術が必要となります。そのため、眼瞼下垂を発症しないように予防・対策することが非常に重要です。
日頃から取り組める対策
瞼に負担をかけていないかどうか、まずは日常の生活環境を見直してみましょう。
瞼にダメージを与えない
瞼のマッサージや、目のかゆみが気になって強く擦る行為は、眼瞼挙筋や挙筋腱膜にダメージを与える原因となります。アトピー性皮膚炎や花粉症で目のかゆみが発生し、どうしても瞼を擦ってしまいがちな方は、医療機関で適切な治療を受けることをお勧めします。
また、アイメイクを除去する時に、瞼に強い力をかけることも避けましょう。クレンジング時の負担を減らすためにも、濃いアイメイクやつけまつ毛は控えるのが賢明です。
その他、二重瞼を形成するアイプチやアイテープも、糊(のり)成分が皮膚のかぶれを誘発し、瞼に負担をかけてしまう危険性があります。
コンタクトの付け外しはゆっくり行う
コンタクトレンズを装着・取り外す際は、瞼を強く引っ張らないように注意しましょう。
また、在宅中はメガネに変更するなどして、コンタクトレンズの装着時間を可能な限り短縮できれば、瞼の裏からの眼瞼挙筋への負担を軽減できるので効果的です。
ハードコンタクトを使用している方は、ソフトコンタクトに変更するだけでも、眼瞼下垂の発症リスクを抑えられる可能性があります。
パソコンやスマートフォンなどを見続けない
スマートフォンやパソコンの長時間使用は避け、定期的に目を休憩させましょう。遠くの景色を見たり、目を閉じるなどして、ディスプレイから目を離す時間を定期的に確保することが重要です。
また、乾燥予防のためにも、作業中にまばたきする頻度を意識的に増やしましょう。
紫外線対策と保湿ケアを徹底する
紫外線や乾燥による肌のダメージは、瞼の角質肥厚を引き起こし、眼瞼下垂の原因となります。日焼けを防ぎ、目元の保湿ケアを心がけて、肌のターンオーバーを正常化しましょう。
眼瞼挙筋を鍛える
眼瞼下垂の最大の原因は、瞼を持ち上げる眼瞼挙筋の機能低下です。そのため、眼瞼下垂の発症予防には眼瞼挙筋を鍛えるトレーニングが効果的です。
眼瞼挙筋トレーニング
以下の①~④の手順を1日に数回繰り返してください。
①目をゆっくりと閉じ、額の力を抜くように眉を下げます。
②手のひらで額全体を押さえ、左右の眉が動かないように固定します。
③両目を最大限まで見開いて、5秒間維持します。
④目を静かに閉じてリラックスします。
医学的アプローチ
ボトックス注射は、眼瞼下垂の予防に有効な方法です。「ボトックス」とはボツリヌス菌が作り出す毒素で、筋肉を麻痺させて収縮を弱める作用があります。
眼瞼挙筋が機能低下すると、額にある前頭筋を頼って瞼を持ち上げようとするため、眼瞼挙筋の機能がさらに低下して、眼瞼下垂の発症を招きます。
そこで、ボトックスを額に注射すれば前頭筋の動きが弱くなるため、その筋力に頼らずに、眼瞼挙筋を使って瞼を持ち上げる状態を促せます。結果として、眼瞼挙筋を自然に鍛えることになり、眼瞼下垂の予防効果が期待できるのです。
ただし、既に眼瞼下垂の症状のある方がボトックス注射を受けると、症状が悪化してしまう恐れがありますので、医師としっかり相談した上で、瞼の状態を確認してから治療を受けるようにしてください。
眼瞼下垂により日常生活に支障をきたしている場合は手術を受けましょう
眼瞼下垂が悪化しており、瞼の重さや視野の狭窄によって日常生活に支障をきたしている場合は、眼瞼下垂手術がお勧めです。
眼瞼挙筋の機能が大幅に低下していると、セルフケアだけでは十分な改善が見込めません。
眼瞼下垂手術を受けることによって根治が期待できるほか、加齢に伴う挙筋腱膜の緩みや皮膚の弛緩を遅らせることにも繋がり、アンチエイジング効果が見込めます。
軽度の段階で手術を行うことで、術後のリスクを最小限に抑え、より自然で美しい仕上がりを実現できます。また、眼瞼下垂の進行を防ぐ予防的治療としても、手術は効果的な選択肢となります。
まとめ
この記事では、眼瞼下垂の発症リスクが高い方の傾向と、眼瞼下垂の予防・対策方法についてご紹介しました。
眼瞼下垂発症の主因は加齢であり、特に40歳以降になると発症リスクが上昇します。
一方で、紫外線やほこりなどの刺激や、アイプチやコンタクトレンズなどによる瞼への過大な負荷、VDT作業などの生活環境が原因で、眼瞼下垂の発症を誘発する場合もあるため注意が必要です。
また、直接的な因果関係はまだ不明ですが、暴飲暴食や運動不足、喫煙などにより生活習慣病を抱えると、眼瞼下垂のリスクを高める可能性も指摘されています。
生活環境や生活習慣を見直すとともに、眼瞼挙筋のトレーニングを取り入れて、眼瞼下垂の予防・対策に取り組みましょう。
