
自分が薄毛であることについて悩まれている方は多いと思います。
AGAの発症には、5αリダクターゼという酵素の関与が非常に大きいことが知られています。5αリダクターゼはⅠ型とⅡ型の2種類があり、どちらが関与しているかによってAGAの発症範囲が異なり、適切な治療薬も異なります。したがって、AGAの治療を希望されている場合は、Ⅰ型とⅡ型に関する違いを押さえておくと良いでしょう。
本ページでは、5αリダクターゼの種類とそれぞれの特徴について説明します。是非参考にしてください。
AGA(男性型脱毛症)について
日本では約1,200万人以上の方が抜け毛や薄毛で悩んでおり、そのほとんどの原因がAGAであると言われています。
AGA(Androgenetic Alopecia)は日本語では「男性型脱毛症」と呼ばれており、成人男性でよく起きる進行性の脱毛症のことです。
AGAは、男性ホルモンが原因となって発症し、頭髪の抜け毛が増えたり、髪の毛が軟毛化して細く柔らかくなったりします。
全年齢平均では、日本人男性のAGA発症頻度は約 30%ですが、年代別の統計では、20 代で約 10%、30 代で 20%、40 代で 30%、50 代以降で 40 数%と年齢が上がるに伴って発症頻度も増加していきます。このように基本的に30〜50代の中年男性によく起こる疾患ではありますが、昨今では20代を中心に若年層のAGAも増加しています。
5αリダクターゼについて
5αリダクターゼはAGAに深く関与していることが知られていますが、以下では5αリダクターゼとはどのような物質で、どのような作用をするのか、AGAにどう関わっているのかについて解説します。
5αリダクターゼとはDHTを生成する還元酵素
5αリダクターゼは、代謝系に関与する代謝酵素の1種である還元酵素で、人の体内で起こる化学反応には必須の酵素です。
5αリダクターゼは、男性の睾丸から分泌されるテストステロン(男性ホルモンの一種)をジヒドロテストステロン(DHT)というホルモンへと変換する作用を有します。
このDHTが頭皮の毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体と結合することで、間接的に毛母細胞の機能を低下させると、髪の毛の軟毛化、抜け毛の増加、ヘアサイクルの乱れが生じ、薄毛になります。
このように、5αリダクターゼ自体が直接的に薄毛を誘導するわけではありませんが、5αリダクターゼが活発に働くとAGAの発症リスクが高まります。
髪の毛には悪い役割をするように見える5αリダクターゼですが、5αリダクターゼ活性が適正であり、DHTが適量であれば、体内の男性ホルモンの働きをサポートし、健全な性欲と性的パフォーマンスを維持するのに重要な役割を持ちます。また、DHTは、胎児期や成長期には男性生殖器の正常な発達や二次性徴の正常な進行に欠かせないホルモンです。
しかし、成人において5αリダクターゼの量が過剰になり、DHTが過剰になると、頭皮にある男性ホルモン受容体に作用し、ヘアサイクルを乱してAGAを発症させるようになります。
5αリダクターゼの分布箇所
AGA発症に関与する5αリダクターゼですが、Ⅰ型とⅡ型では、異なる領域に分布しています。
5αリダクターゼⅠ型の場合
5αリダクターゼⅠ型の分布は、皮脂腺や前立腺に集中していますが、側頭部や後頭部、及びほぼ全身の毛乳頭細胞に広がっています
5αリダクターゼⅡ型の場合
5αリダクターゼⅡ型は、前頭部・頭頂部、生え際などの頭皮、髪、脇、陰毛等の毛乳頭細胞に分布します。
Ⅰ型に比べてⅡ型の方が、テストステロンをDHTへ変換しやすいと考えられています。なぜなら、AGAで特に薄毛が問題になる前頭部や頭頂部で、主に5αリダクターゼⅡ型が存在しているからです。
5αリダクターゼとAGA・薄毛との関係について
5αリダクターゼは全ての男性の頭皮に存在しますが、5αリダクターゼの分泌量によって、AGAや薄毛になるかどうかが決まります。
5αリダクターゼの分泌量は個人差があり、5αリダクターゼの分泌量が過剰になるほどAGAのリスクが高くなり、少なくなるほどAGAのリスクが低くなります。
5αリダクターゼの分泌量は、遺伝的素因が影響すると考えられており、両親のいずれかが5αリダクターゼを多量に発現する遺伝子を持っていれば、子や孫にもその性質が受け継がれる可能性が高くなります。
また、5αリダクターゼ以外にも、DHTが結合し脱毛因子TGF-βを増やす男性ホルモン受容体の感度も、遺伝的素因に大きく影響されると言われています。
これらの事由から、当院では、カウンセリング時に近親者に薄毛の方がいるかどうかお尋ねしています。
なお、薄毛の遺伝的素因を持っていることが、確実にAGAを発症することに直結するわけではありませんが、AGAの発症には、遺伝的素因や5αリダクターゼの発現量が深く関係していることを把握しておくのは大切なことです。
自分のAGAには、5αリダクターゼⅠ型とⅡ型のどちらが関与している?
以下ではAGA発症の原因が5αリダクターゼⅠ型であるのか、Ⅱ型であるのかの見分け方を解説します。
5αリダクターゼⅠ型
上述したように、5αリダクターゼⅠ型の分布は頭皮では側頭部や後頭部に集中しているものの、ほぼ全身の毛乳頭細胞に及びます。
一般的に皮脂量が多いと、薄毛には5αリダクターゼⅠ型が関与すると言われますが、頭皮の皮脂量と薄毛とは相関がないことがわかっています。
そのため皮脂量が多いからといって、5αリダクターゼⅠ型が関与しているとは言い切れません。
ただし、頭皮の皮脂量が多いと、頭皮環境が悪く、毛髪の成長に悪影響を及ぼす可能性はあります。したがって、あらゆるケースで5αリダクターゼⅠ型がAGAに全く関与していないとも言い切れないのが実情です。
5αリダクターゼⅡ型
5αリダクターゼⅡ型は、頭皮において前頭部や頭頂部に集中しています。頭皮以外では、髭や脇、陰毛などに集中しています。
DHTは、髭や体毛に存在する男性ホルモン受容体に結合すると、インスリン様成長因子1(IGF-1)を分泌させ、髭や体毛を濃くするように作用します。したがって、5αリダクターゼⅡ型の量が多い方だと髪の毛は薄くなる一方で、髭や体毛は濃くなります。
髪の毛は薄毛であるのに、髭や体毛が濃い方は5αリダクターゼⅡ型の分泌が多い可能性が高いです。
5αリダクターゼⅠ型・Ⅱ型のAGA治療法
AGAに対して、5αリダクターゼⅠ型とⅡ型のいずれが関与していても、AGAの治療法は同じものになります。
現在、治療薬としてフィナステリドとデュタステリドの2つがあり、どちらも5αリダクターゼの作用を抑える作用があります。
フィナステリドは、5αリダクターゼⅡ型に効果を示しますが、一方、デュタステリドはⅠ型・Ⅱ型どちらにも効果を示します。上述したように、AGAの発症には主として5αリダクターゼⅡ型が関与しているため、基本的には、最初にフィナステリドを使ってみて、効果が不十分な場合にデュタステリドを使用します。
フィナステリド(プロペシア)
フィナステリド(プロペシア)は、5αリダクターゼⅡ型の活性を抑え、AGAや薄毛を予防する効果があり、AGA治療薬の中でも最も使われています。
日本皮膚科学会のガイドラインでは、フィナステリドの推奨度は最高評価であるAとなっており、フィナステリドの使用は強く推奨されています。
デュタステリド(ザガーロ)
デュタステリド(ザガーロ)は、5αリダクターゼⅠ型・Ⅱ型の活性を抑える効果があります。日本においては、プロペシアの次に承認が下りました。
日本皮膚科学会のガイドラインでは、プロペシアと同じく、ザガーロの推奨度は最高評価であるAとなっており、デュタステリドの使用は強く推奨されています。
副作用の違い
フィナステリドとデュタステリドは同様の効果を示すため、これらの副作用も大きな違いはありません。両方に共通する代表的な副作用は性機能不全と肝機能障害です。したがって、以前より肝機能に障害を持つ方に対する処方は慎重に検討します。
5αリダクターゼを抑制する食べ物やサプリメント
治療薬の服用は、5αリダクターゼを強く抑制するのに効果的ですが、日頃の食事でも5αリダクターゼに対する抑制効果の可能性があるものがあります。
以下では5αリダクターゼに対する抑制効果の可能性がある食事やサプリメントをご説明します。
ノコギリヤシ
ノコギリヤシはヤシ科の植物で、北アメリカ東南部に存在します。
ヨーロッパでは以前からノコギリヤシを用いて前立腺肥大の治療を行っていました。現在では日本でもノコギリヤシを配合したサプリメントが市販されています。
ノコギリヤシは、5αリダクターゼの働きを抑制する効果があると言われており、近年では、ノコギリヤシが有する、5αリダクターゼの働きを抑制する効果を考慮し、育毛シャンプーや育毛剤などに添加されることが多くなっています。
亜鉛
亜鉛はノコギリヤシと同じく、AGAの予防に有望な栄養素で、実際に5αリダクターゼを抑える効果が証明されています。
また、亜鉛はミネラルの一種で、摂取したタンパク質を分解し、骨や筋肉、髪の毛などの組織に取り込む際の反応に必要であるとされており、育毛効果も期待できるものです。
しかし、亜鉛をとにかく多量に摂取すればいいわけではなく、注意事項に従い、毎日適正な分量を摂取するようにしてください。
イソフラボン
イソフラボンはポリフェノールの一種で、大豆胚芽に豊富に含まれます。
化学構造が女性ホルモンと類似しており、体内でも女性ホルモンと類似した作用をします。
イソフラボンは、テストステロンが薄毛の原因となるジヒドロテストロンに変化するのを抑えるため、薄毛予防に有効であると言われています。
なお、イソフラボンは豆乳、納豆、豆腐などの大豆製品にも多く含まれます。イソフラボンも亜鉛と同じく、過剰摂取は副作用の可能性があります。
そのため、普段の食事から適量のイソフラボンを少量ずつ摂取できるように、毎日1食に大豆製品を追加するようにしてください。
AGAや薄毛の抑制に最も効果を示すのは治療薬です
以上、5αリダクターゼを抑制する食べ物やサプリメントについてご説明しました。
しかしながら、これはAGA発症前の予防であって、発症後の治療に役立つことを保証するものではありません。
一旦AGAを発症すると、食べ物やサプリメントでの治療は難しいです。
まだ抜け毛や薄毛があまり進行していない間に対策をしながら、抜け毛や薄毛になっていることに気づけば、早めに専門医にご相談ください。
AGAは、早期から治療することが最も効果的な解決方法になります。
