コラム

2025.03.21

ストレスが原因で眼瞼下垂は起こる?眼瞼下垂とストレスの関係や治療法について解説!

「ストレス社会」で生きる現代人は様々な心身の不調に悩まされていますが、とりわけパソコンやスマートフォンなどに目を酷使する時間が長くなっているため、視力低下や視界の狭まり、瞼の重さなど目に対する違和感を訴える方が増えています。昨今では、中高年齢層にとどまらず、若年層の中にも「眼瞼下垂」の発症を疑う方が多く見られるようになってきている模様です。はたして、ストレスが原因で眼瞼下垂を発症するのでしょうか。

ここでは、ストレスと眼瞼下垂との因果関係について述べるとともに、眼瞼下垂以外の理由で目の開閉が困難になる症状及びその原因についても解説していきます。是非、ご一読下さい。

 

眼瞼下垂とは

眼瞼下垂とは、何らかの原因によって瞼を正常に持ち上げる筋肉や神経の働きが低下し、上瞼が下がってくる状態のことを指します。それにより、眠そうに見えたり、瞳の一部が隠れてしまったりするなど、外見が悪くなるといった不都合が生じます。比較的発症頻度が高く、誰にでも起こりうる疾患です。

主な自覚症状としては、視界の狭まり(特に上方視野が遮られる)、瞼の重さや違和感(目を開けるのが疲れる)、視力への影響(目を細める癖がつき視力低下やピント調節に問題が生じる)といったものが挙げられます。さらに随伴症状(ある疾患に付随して起こる副次的な症状)として、頭痛や肩こり(眉や額の筋肉を頻繁に使うため、目やその周辺が疲れやすくなる)、眼精疲労(視界の確保に努力することで目の筋肉に過度な負荷がかかる)、鬱陶しさや疲労感(日常生活での目の使用が不快に感じられたり全身の疲労感に繋がったりする)などを引き起こすことがあります。

【眼瞼下垂の症状】

眼瞼下垂は加齢の影響で50代以降に顕著に現れ、その場合の主な症状は以下の通りです。

  • 上瞼の下垂
  • 視界の狭まり
  • 瞼の重さや疲れ
  • 眼精疲労、頭痛、肩こり
  • 視力への影響

また、美容的な変化も無視できません。

  • 目が小さく見える
  • 老けた印象を与える
  • 眉毛ごと目を開けようとする癖がつく
  • 額や眉間のシワの増加
  • 左右非対称な目元

眼瞼下垂を放置しておくと、上瞼の下垂による視野狭窄や視力低下だけでなく、眼精疲労・頭痛・肩こりといった随伴症状、そして日常生活にも美容にも様々な悪影響をもたらします。
こうした症状が続く場合には、専門医への相談をお勧めします。

 

眼瞼下垂はストレスが原因で発症する?

強いストレスと眼瞼下垂の発症との因果関係を説明する際に重要なのは、「ミュラー筋」の役割です。
ミュラー筋は上眼瞼挙筋と瞼板を繋ぐ筋肉で、自律神経の1つである交感神経に支配され、瞼の開閉を調節する役割を担っています。

慢性的なストレスは自律神経のバランスを崩し、そのため交感神経の働きが鈍くなることでミュラー筋の筋力が低下し、眼瞼下垂を引き起こすことがあります。

また、画面の凝視や長時間労働などでストレスが続くと、顔や首、肩周りの筋肉が疲労して血行が悪化します。この状態が目元にも影響を及ぼし、上眼瞼挙筋の疲労感を助長することで、眼瞼下垂の症状を悪化させることがあります。

 

ストレス以外の眼瞼下垂の主な原因

眼瞼下垂の原因は多岐にわたりますが、大きく分けると「先天性眼瞼下垂」と「後天性眼瞼下垂」の2種類となります。

【先天性眼瞼下垂】

先天性眼瞼下垂とは、生まれつき上瞼が正常に開かない状態を指します。片眼性(へんがんせい)と両眼性(りょうがんせい)があり、片眼性が約8割を占めます。出生直後から見られる眼瞼下垂で、自然治癒は期待できません。治療のためには手術が必要となります。

瞼が瞳孔を覆い視界を遮ることになるため、重度の場合は視力の発達に影響を及ぼしかねず、特に乳幼児期に発生した場合、弱視や斜視が生じる可能性があります。ただし、乳児が顎や眉を上げて見ようと努力している時は軽症のことが多いため、あまり小さなうちに手術をする必要のない場合がほとんどです。視力の発達状況を注意深く観察し、弱視の診断が可能となる3歳以降まで待つのが一般的です。

審美的な観点も含めて考えると、成長途中での手術は顔つきが変化した後に再手術の必要が生じる可能性があるため、思春期(14歳頃)以降が推奨されています。
早期発見と適切な対応が子どもの視力の正常な発達において重要ですので、定期的に専門医に相談して、手術の必要性や時期について判断してもらう方が良いでしょう。

先天性眼瞼下垂の原因として考えられる主な要因は以下の通りです。

眼瞼挙筋の未発達・機能低下
瞼を持ち上げる筋肉である眼瞼挙筋(がんけんきょきん)が十分に発達していないかその機能が低下していると、筋肉の収縮力が弱まり、瞼が下垂してしまいます。
「単純性眼瞼下垂(たんじゅんせいがんけんかすい)」と呼ばれるもので、先天性眼瞼下垂の約9割を占めると言われています。

動眼神経の障害(先天性動眼神経麻痺)
眼球を動かす筋肉や瞼を上げる筋肉を支配する動眼神経が先まれつき機能しない「先天性動眼神経麻痺(せんてんせいどうがんしんけいまひ)」を発症している場合にも、上瞼を十分に持ち上げられず、眼瞼下垂を引き起こします。

その他、交感神経系の機能障害によって起こる「ホルネル症候群」や、顎を動かす時に上瞼が不随意に動く症状「マーカスガン現象」、神経と筋肉の接合部に異常が生じる自己免疫疾患の「重症筋無力症」などによっても、稀に眼瞼下垂を引き起こされます。

【後天性眼瞼下垂】

後天性眼瞼下垂とは、普通に開いていた瞼が、徐々に、あるいは急に下がってきた状態のことを指します。両目に発症することが多いものの、片目だけに発症することもあります。片目の場合は特定の局所的な問題が多く、両目の場合は全身的な要因が関与していることが一般的です。

後天性眼瞼下垂のうち最も頻度の高いタイプは、「腱膜性眼瞼下垂(けんまくせいがんけんかすい)」です。瞼を持ち上げる眼瞼挙筋を支える挙筋腱膜(きょきんけんまく)と瞼の先端部分にある瞼板(けんばん)の結合が緩むことで、瞼が下がる状態を指します。大半は加齢が原因ですが、コンタクトレンズやアイプチの長期使用、パソコンやスマートフォンの使いすぎなど生活習慣の影響により若年層でも発症することがあります。

その他、後天性眼瞼下垂には、目の筋肉そのもの構造または機能の異常による「筋原性眼瞼下垂」や、瞼の働きを司る動眼神経の障害が原因の「神経原性眼瞼下垂」、瞼やその周辺組織における外傷・腫瘍・異物など機械的刺激が原因の「機械性眼瞼下垂」もあります。

加齢に伴う皮膚のたるみ・筋力低下
後天性眼瞼下垂の中で最も多いのが「加齢性眼瞼下垂」や「老人性眼瞼下垂」と呼ばれる症状で、加齢の影響で挙筋腱膜がたるみ、眼瞼挙筋やミュラー筋(上眼瞼挙筋と瞼板を繋いでいる筋肉)が機能不全を起こして、瞼が開きにくくなる状態を指します。
加齢性眼瞼下垂は60歳以上の高齢者の大部分に見られ、両方の目に現れる両眼性がほとんどです。

パソコン・スマートフォンの長時間使用
スマートフォンやタブレット端末、パソコンなどのディスプレイを長時間見続けることで、目や体に様々な不調が現れる状態を「VDT症候群」と言います。これには眼精疲労、ドライアイ、かすみ目、視力低下、肩こり、頭痛などが含まれます。このVDT症候群が原因となり、眼瞼下垂が発症したり悪化したりする可能性が指摘されています。
予防のためには目の負担を軽減するために、長時間の使用を控える、こまめに目を休める、作業中にまばたきする回数を増やす、などの対策が必要となります。

コンタクトレンズの長期装用
コンタクトレンズ、とりわけハードコンタクトレンズの長期装用は、若年層といえども眼瞼下垂発症のリスクを高めるとされています。ハードコンタクトレンズは、装着の際に瞼やその周辺に対する機械的な負担や刺激を伴うだけでなく、着脱の際にも瞼を引っ張ることが多く、挙筋腱膜と瞼板の結合部が緩みやすくなるからです。ハードコンタクトレンズの使用者は、非使用者に比べて眼瞼下垂を発症する確率が約20倍も高い(※1)とされています。

(1)Takeshi Kitazawa Hard contact lens wear and the risk of acquired blepharoptosis: a case-control study ePlasty 13 e30 2013/6/19

アイプチの長期使用
簡単に二重瞼を作ることができるアイプチは、若年層に人気のアイテムです。高齢者の中にも、加齢によってたるんだ瞼の皮膚にアイプチを貼り付けて、目を開きやすくしようとする方もいらっしゃると聞きます。しかし、アイプチを長期的に使用していると、眼瞼挙筋が疲労してかえって眼瞼下垂の原因となる場合があります。それだけでなく、粘着部分の成分が瞼の皮膚に刺激を与え、かぶれを引き起こして眼瞼下垂を誘発するリスクも考えられます。

アレルギー疾患
花粉症やアトピー性皮膚炎は直接的に眼瞼下垂を引き起こす疾患ではありませんが、目のかゆみで頻繁に瞼や目元をこすってしまうと挙筋腱膜に負担がかかり、その結果、腱膜が伸びたり瞼板との繋がりが緩んだりことで、若年層でも眼瞼下垂が発症することがあります。
また、アトピー性皮膚炎では、瞼の皮膚が炎症を起こし、腫れたり厚くなったりすることがあります。この慢性的な炎症が瞼の組織や腱膜を弱らせ、眼瞼下垂の原因となることがあります。いずれにしても、花粉症やアトピー性皮膚炎に悩まされている方は、瞼や目元のケアを徹底することで、眼瞼下垂のリスクを抑える必要があります。

脳・神経系の疾患
後天性眼瞼下垂には、加齢や生活習慣の他にも、瞼の動きを司る神経に障害が生じて発症する場合(神経原生眼瞼下垂)もあり、その原因となる代表的な疾患は次の3つです。

  • 脳梗塞
  • 脳腫瘍
  • 髄膜炎

【脳梗塞】
脳梗塞とは、脳の血管が詰まり血液の供給が途絶えることで、脳細胞が酸素や栄養を得られず、壊死する病気を指します。主な症状には、言語障害、片側の手足の麻痺や痺れ、めまいや平衡感覚の異常などがありますが、眼瞼挙筋をコントロールする動眼神経が麻痺して眼瞼下垂を引き起こすことがあります。

【脳腫瘍】
脳腫瘍とは、脳組織や髄膜、脳神経、下垂体など頭蓋骨の中に発生する腫瘍の総称で、大きくなり脳を圧迫するようになると意識障害や昏睡状態を引き起こし、命にかかわる状態となります。
腫瘍が発生した部位に応じて症状は異なりますが、脳腫瘍が動眼神経の経路を圧迫または侵害すると、眼瞼挙筋が機能不全を起こし、眼瞼下垂が発生します。
また、眼瞼下垂を発症するほど動眼神経周辺に対する圧迫が生じると、眼球運動も不均衡になり物が二重に見える(複視)状態が生じたり、顔の一部または全体に痛みを感じる「顔面痛」などが同時に現れたりすることもあります。

【髄膜炎】
髄膜炎とは、脳と脊髄を覆う保護膜である髄膜に細菌やウイルス、真菌などの病原体が感染して炎症を起こし、発熱、頭痛、吐き気・嘔吐、意識障害などが発症する病気です。この炎症が動眼神経に波及すると、神経の機能が低下し、眼瞼下垂を引き起こす可能性があります。

 

目が開きづらいのは眼瞼下垂以外の疾患が原因となっていることも

「疲れやストレスを感じて目が開きづらい」と思った場合でも、実は眼瞼下垂以外の様々な病気が原因となっていることがあります。例えば、重症筋無力症や甲状腺眼症、脳神経麻痺などの重篤な病気も、瞼の動きに影響を与える場合があるので注意が必要です。

より一般的な病気としては、ドライアイや目の炎症が原因で重さを感じ、目が開きにくくなることもあります。ここでは、目が開きにくくなる症状を発症しやすい主な病気をいくつか取り上げたいと思います。

【眼精疲労】

長時間のパソコンやスマートフォンの使用、体が安定しない状態や暗所での動画視聴、コンタクトレンズの長期装用などは目の筋肉を酷使し、眼精疲労を起こします。その際には、眼瞼挙筋やその周辺の筋肉が疲労するため、瞼が重く感じられることがあります。

【むくみ】

日常的な疲労やストレスによって自律神経が乱れ、血行が悪くなることで水分が滞ると、むくみが発生します。すると、瞼の皮膚や組織にも余分な水分が溜まって瞼が重くなり、これが眼瞼挙筋に過度な負担をかけ、目を開く動作が困難になることがあります。

【顔面麻痺】

長年のストレスによって免疫力が低下しウイルス感染を発症したり、自律神経の乱れで血流が悪化したりすることにより、顔面麻痺が起こる可能性があります。
顔面麻痺が直接的に動眼神経を介して眼瞼挙筋に影響を与え、眼瞼下垂が発症することはありませんが、顔面神経の障害が瞼や目元の筋肉などに影響を与え、間接的に眼瞼下垂を引き起こすことがあります。
顔面麻痺に関連する眼瞼下垂は、まず基礎疾患の治療が優先されますが、後遺症として眼瞼下垂の症状だけが残る場合もあるので、必ず専門医による早期治療を受けるようにしましょう。

 

眼瞼下垂がストレスによって発生した場合の治療法

ストレスが原因で起こる眼瞼下垂は、主に自律神経の乱れや筋肉の疲労が関与しています。この場合、まずはストレスを軽減し、自律神経を整えることが治療の第一歩です。リラクゼーション法や十分な休息、適度な運動を取り入れることで、症状の改善が期待できます。ストレスが仕事由来の場合は、一時的な休職なども検討してみてください。

それでも改善が見られない場合は、他の病気が原因とも考えられますので、眼科や形成外科など専門医の診察が必要です。日常生活の見直しと専門医の治療を組み合わせて対処しましょう。眼瞼下垂の治療法としては、手術が一般的です。

【眼瞼下垂の手術法】

眼瞼下垂の治療には服薬や注射など内科的治療の効果は薄いため、基本的には手術といった外科的治療法を選択することになります。

眼瞼下垂の手術法には確立されたものがいくつもありますが、当院では「まぶたが開けにくいために日常生活に支障があること」「まぶたが下がって視野が狭くなっていること」という保険適用となる条件を満たした手術のみに対応しておりますので、美容目的及び視野に影響のない軽度の眼瞼下垂の手術は実施しておりません。

以下では、眼瞼下垂の代表的な手術法についてご説明します。

挙筋前転術(きょきんぜんてんじゅつ)
挙筋前転術は、瞼を引き上げる筋肉(眼瞼挙筋)から伸びている腱膜を瞼板に固定するものです。上瞼の二重ラインの上を切開し、緩んだ挙筋腱膜を引き出し、適切な位置で瞼板に縫合します。この結果、眼瞼筋肉と瞼板が密着するようになり、楽に目を開けられるようになります。

※筋肉性眼瞼下垂の手術には対応致しかねますので、診断結果に応じて必要があれば、近隣の大学病院をはじめ他院を紹介します。予めご承知おきください。

前頭筋吊り上げ術(ぜんとうきんつりあげじゅつ)
眼瞼挙筋がほとんど機能していないような重度の眼瞼下垂に適用される手術法で、額の筋肉(前頭筋)と瞼を患者自身の腹部などの筋膜やゴアテックスのようなナイロン糸で繋ぎ合わせることで、額の筋肉(前頭筋)の動きを利用して瞼を引き上げることができるようになります。

※筋肉性眼瞼下垂の手術には対応致しかねますので、診断結果に応じて必要があれば、近隣の大学病院をはじめ他院を紹介します。予めご承知おきください。

余剰皮膚切除術(びもうかよじょうひふせつじょじゅつ)
余剰皮膚切除術とは、緩んで垂れ下がっている余分な瞼の皮膚を切除することで、目を開きやすくする手術法です。二重のライン(重瞼線)に沿って切開する方法と、眉毛の下のラインに沿って切開する方法とがありますが、座った姿勢もしくは立った姿勢で、余分な皮膚の取り除く量を決めて切除します。その際は同時に眼輪筋も切除することもあり、最後に細い糸で縫合します。

 

まとめ

眼瞼下垂は、加齢や生活習慣を原因とするものが大部分を占めますが、なかにはストレスが原因で発症する場合もありますので、予防のためにも日頃からリラックス、リフレッシュを心掛け、ストレスを発散させていく必要があります。

ただし、瞼が垂れ下がる症状は必ずしも眼瞼下垂に限ったものではなく、なかには重篤な病気と関連する場合もありますので、必要に応じて専門医に診断してもらうことが重要です。

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