コラム

2025.02.09

眼瞼下垂では何科を受診した方が良い?眼科・形成外科・美容外科のメリット・デメリットを詳しく解説!

眼瞼下垂では何科を受診した方が良い?眼科・形成外科・美容外科のメリット・デメリットを詳しく解説!

眼瞼下垂は、瞼を開く腱膜や筋肉が低下することで、目をしっかりと開けられなくなる疾患です。
「最近、瞼が重くなった」「視界が狭まった」などの症状を自覚する場合、眼瞼下垂の可能性があり、眼科への受診が推奨されます。
しかし、どの診療科に受診した方が良いのか迷われている方もいらっしゃるでしょう。
結論を言うと、眼科に受診しても大丈夫ですし、形成外科や美容外科に受診頂いても大丈夫です。

本ページでは、眼瞼下垂の治療を考えている方を対象に、どの診療科に受診すべきか、各診療科のメリット・デメリットを照らし合わせながら解説します。
是非、参考にして頂けますと幸いです。

 

各診療科の特徴、眼瞼下垂の手術のメリット・デメリット

眼瞼下垂は、眼科・形成外科・美容外科のいずれかの診療科で治療を受けられます。
しかし、検査や診断の質、手術の目的や費用などは異なります。

以下で各診療科の特徴、メリット・デメリットを詳しく解説します。

【眼科】
眼科眼科は、目の症状・疾患を専門とした診療科です。
眼球の状態を詳しく調べることができ、手術の大半は手術顕微鏡を使用して進めるので、精緻な治療を行えます。

眼瞼下垂と似た症状を示す疾患も多数あり、患者様自身では判断が非常に困難です。
偽性眼瞼下垂は、眼瞼下垂と症状が似ていますが、これは他疾患(眼瞼皮膚弛緩症や眼瞼痙攣など)により一見上瞼が下がっているように見える状態で、実際に眼瞼下垂を発症しているわけではありません。眼瞼下垂の手術を実施しても症状は解消しないため、正しく見極める必要があります。

ほぼ全ての眼科には細隙灯顕微鏡などの専用の医療機器が導入されており、患者様の症状に合わせて適切な検査を実施しています。そのため、眼瞼下垂の原因ならびに他疾患の有無を正確に調べられます。眼瞼下垂なのかご自身では判断がつかない方、別の疾患の可能性がある場合、最初は眼科を受診することをお勧めします。

眼科で行う眼瞼下垂の手術は、機能を改善することが一番の目的となり、「目を大きくしたい」「左右の目のバランスをきれいにしたい」など、見た目の希望に対して完全には沿えません。
また、眼科によっては皮膚の切開・縫合など外科手術を行っていないこともあるため、受診前に眼瞼下垂手術の実績があるか確認しておくことをお勧めします。

眼科で眼瞼下垂手術を受けるメリット

  • 専用の医療機器が導入されており、眼球の状態を詳しく調べられる
  • 顕微鏡を使用して精緻な治療を行える
  • 検査・治療は健康保険で受けられる

眼科で眼瞼下垂手術を受けるデメリッ

  • 眼科によっては外科手術に対応していないことあるため、事前に確認する必要がある
  • 見た目の希望に対しては基本的には対応できない

 

【形成外科】
形成外科は、身体の表面に起こった異常・疾患を専門とした診療科です。
先天性の異常・疾患・外傷などによりできた傷や欠損、変形などに対して外科手術を行い、改善を図ります。

形成外科では、体の表面であればどの部位でも治療を行え、瞼の異常である眼瞼下垂も対応しています。
また、生まれつき上眼瞼挙筋の力が弱いこと、あるいは瞼を上げる筋肉をコントロールする神経の異常があることで起こる先天性の眼瞼下垂の治療も行えます。

体の表面の機能改善に加え、眼科に比べると見た目を改善することにも長けている点がポイントとなります。
眼瞼下垂の治療であれば、症状改善を一番の目的に置きつつ、審美的な視点も考慮した手術を行えます。

一方、形成外科では、眼球の状態について詳しく調べることができません。また、体の表面全ての部位を対象としているため、瞼を専門とする医師は眼科に比べると圧倒的に少ないです。手術においても、眼科のように顕微鏡を用いることはほとんどなく、肉眼あるいはルーペを用いて行うことが多いです。

形成外科で眼瞼下垂手術を受けるメリット

  • 機能改善に加え、審美的な視点も考慮して手術を行える
  • 切開手術や縫合の高い技術を持つ医師が担当する
  • 検査・治療は健康保険で受けられる

形成外科で眼瞼下垂手術を受けるデメリッ

  • 眼球の状態について詳しく調べられない
  • 瞼を専門とする医師は眼科に比べると圧倒的に少ない

 

【美容外科】
美容外科美容外科は、形成外科の一分野としての位置づけですが、治療目的や治療対象、保険の適用などに大きな違いがあります。

形成外科は体の表面に起こる異常を治療する一方で、美容外科は異常がない健康な部位に対して「より美しくする」など審美的な目的で治療を行います。
形成外科の手術の目的は、傷や損傷、変形を改善することにあり、外見的な変化はあくまで手術の結果として得られるものです。

眼瞼下垂の手術に対応した美容外科クリニックは多数あります。
瞼の開きを改善することに加え、たるみの解消、二重幅を広くするなど、美容的な要望にも対応できる点が、美容外科と他の診療科との違いです。
また、眼瞼下垂の手術のほか、目頭切開や二重術など様々なメニューが用意されているため、これらの施術を一緒に受けることで希望する目元に近づけられます。

なお、治療は自由診療となり、費用が比較的高額になる点がデメリットです。
また、美容外科で行う眼瞼下垂の手術は「周囲から整形したと思われる」と心配される方も少なくありません。
実際、眼科で行う保険適用の手術と比較した場合、審美的な目的を一番に置く美容外科での手術は整形手術の側面が強いです。
「周囲から整形ではないか?」と思われることに不安がある方は、最初に眼科を受診されて意見を聞いた方が良いでしょう。

美容外科で眼瞼下垂手術を受けるメリット

  • 審美性を第一とし、希望する目元に仕上げられる
  • 眼瞼下垂とは別の施術も同時に受けられる

美容外科で眼瞼下垂手術を受けるデメリッ

  • 眼球の状態について詳しく調べられない
  • 自由診療となるため、費用が高額になる

 

保険適用・費用について

眼瞼下垂の治療は保険診療と自由診療に分けられます。
保険診療は公的医療制度の対象となる診療で、医療費の自己負担は最大3割となります。
一方、自由診療は医療保険制度を用いない診療で、医療費は患者様の全額自己負担となります。

保険の適用有無は診療科によって違います。治療費が大きく変動するため、予め確認しておくことが大切です。

診療科 保険適用
眼科 あり
形成外科 あり
美容外科 なし

科・形成外科は、異常・疾患の治療を一番の目的としており、ほとんどの場合は治療に保険が適用されます。そのため、眼瞼下垂の治療費も患者様の負担は少なく抑えられます。
なお、疾患の症状・機能改善に留まり、審美的な希望に対しては基本的に対応できません。
また、眼瞼下垂が軽度であると判断された場合、保険が適用されないこともあります。

一方、美容外科では基本的に治療は自由診療となります。患者様の費用負担は大きくなりますが、審美的な要望が強い場合は美容外科の受診をお勧めします。
なお、日常生活に影響が出ている重度の眼瞼下垂では、美容外科でも保険が適用されることがあります。

※当院での保険適用の有無については診断後の判断となります(症状のない方は自費診療)。難しい症例の治療が必要な方は近隣の大学病院を紹介いたします。

 

眼瞼下垂の治療法

眼瞼下垂は内服薬や注射などの薬物療法では効果が見込めないため、治療は手術が基本となります。眼はご自身の印象を左右する重要な部位のため、患者様の状態に適した処置となるように手術は様々な方法が確立されています。当院では保険適用となる手術を行っています。以下が主な術式です。

【挙筋前転術(きょきんぜんてんじゅつ)】
緩んだ、あるいは外れた挙筋腱膜を瞼板に再固定する手術です。まずは上瞼の二重の線を切開します。その後、緩んでいる挙筋腱膜と瞼板を切り離し、挙筋腱膜を前転して、腱膜がしっかり張った状態で糸を使って瞼板に再固定します。たるみが解消されることで、目を開けやすくなります。

※当院では筋肉性の眼瞼下垂への手術は行っておりません。診断の結果、難しい症例の治療が必要な方は近隣の大学病院を紹介いたします。

【前頭筋吊り上げ術(ぜんとうきんつりあげじゅつ)】
上眼瞼挙筋の挙上機能が大幅に低下しており、挙筋前転術では治療効果が期待できない重症例が対象となります。太もも外側の筋膜や糸などを用いて、眉毛を上げる筋肉(前頭筋)と瞼板を連結する手術です。眉毛を上げる動作により、目を開けやすくなります。

※当院では筋肉性の眼瞼下垂への手術は行っておりません。診断の結果、難しい症例の治療が必要な方は近隣の大学病院を紹介いたします。

【余剰皮膚切除術(びもうかよじょうひふせつじょじゅつ)】
余ってたるんだ上眼瞼皮膚を切除する手術です。上眼瞼皮膚を切除する「眼瞼皮膚切除」と眉毛の下のラインで切除する「眉毛下皮膚切除」の2つがあります。切除範囲は、患者様が立った状態、もしくは座った状態で診察を行い決めていきます。また、目の周りを囲む眼輪筋も切除することもあります。最後は細い糸により縫合します。瞼が下がる原因となるたるんだ皮膚を切除するため、目が開きやすくなります。

 

眼瞼下垂手術の費用目安

眼瞼下垂の手術は上述したようにいくつかの術式があり、内容に応じて費用が異なります。
以下は、各手術方法後との費用の目安となります。

手術方法 費用目安(片目)
挙筋前転術

保険診療: 約22,000円(3割負担)
自由診療: 約○○万円

前頭筋吊り上げ術

保険診療: 約56,000円(3割負担)
自由診療: 約○○万円

余剰皮膚切除術

保険診療: 約18,000円(3割負担)
自由診療: 約○○万円

※上記の費用には、診察代や検査代、麻酔代は含まれていません。

美容外科にて自由診療で手術を受ける場合、様々な術式から、希望する目元に近づけるための適切な術式を選択できます。
なお、手術費用はクリニックによって違いがあり、施術内容なども異なります。そのため、複数のクリニックを比較しましょう。

※当院での保険適用の有無については診断後の判断となります(症状のない方は自費診療)。難しい症例の治療が必要な方は近隣の大学病院を紹介いたします。

 

眼瞼下垂の手術が保険適用となる条件

眼瞼下垂の手術全てに保険が適用されるわけでなく、以下のように条件があります。

  • 眼瞼下垂の診断を受けている。
  • 美容目的の手術ではなく、疾患や怪我の治療が目的である。
  • 治療法が、国が承認した治療法であり、厚生労働省より承認されている医薬品が使用されている。

保険適用の有無については診断後の判断となります(症状のない方は自費診療)。難しい症例の治療が必要な方は近隣の大学病院を紹介いたします。

 

よくある質問

Q.眼瞼下垂ではどの診療科を受診すべきですか?
一般的には眼科あるいは形成外科となります。審美的な要望が強い場合は美容外科への受診が推奨されますが、自由診療となるため注意が必要です。

Q.眼科と形成外科にはどういう違いがありますか?
眼科は目の異常・疾患を治療対象としています。一方、形成外科は体表面の全ての部位を治療対象とし、クリニックによっては機能改善と審美的な視点の両方に配慮した治療を行っています。

Q.形成外科と美容外科はどういう違いがありますか?
美容外科は形成外科の一分野ですが、審美性を第一の目的としています。

Q.美容外科の手術はどういったデメリットがありますか?
自由診療となり、患者様の費用負担が大きくなります。

Q.眼瞼下垂の手術には保険が適用されますか?
眼科や形成外科での機能改善を目的とした手術には基本的に保険が適用されます。

 

まとめ

まとめ本ページでは、眼瞼下垂の治療でどの診療科に受診すべきかについて、各診療科の比較をしながら解説しました。形成外科や美容外科でも眼瞼下垂の治療を受けられますが、眼瞼下垂の重症度を知りたい場合、別の疾患の可能性がある場合、最初は眼科を受診することをお勧めします。

そこから、眼瞼下垂の重症度、予算、希望の仕上がりなどに応じて、どの診療科に受診するか選びましょう。

2025.02.08

予防できる眼瞼下垂と予防できない眼瞼下垂がある?眼瞼下垂の効果的な予防法を解説!

予防できる眼瞼下垂と予防できない眼瞼下垂がある?眼瞼下垂の効果的な予防法を解説!

眼瞼下垂には予防できるものと予防できないものがあります。
本ページでは、生活習慣の見直しやトレーニングなど日常生活で取り組める予防策、医療機関にて行う予防注射などについて詳しく解説します。

 

●眼瞼下垂とは

眼瞼下垂とは眼瞼下垂とは、何らかの原因によって、瞼を開く筋肉や腱膜の機能が低下することで、目をしっかりと開けられなくなる疾患です。
目を開けようとしても、瞼が瞳孔(黒目の中心)に部分的に覆いかぶさってしまいます。
症状は片目あるいは両目に起こり、程度は個人差があります。重症例では、視野が狭窄して日常生活に支障を及ぼします。
このように、眼瞼下垂では視野が狭窄することが最も注意すべき点です。

眼瞼下垂は年齢問わず発症する可能性があり、先天性の「先天性眼瞼下垂」、後天性の「後天性眼瞼下垂」、そして機能的異常はないものの眼瞼下垂と似た状態である「偽眼瞼下垂」に大別されます。

先天性眼瞼下垂は、出産直後から眼瞼下垂の症状が出ている状態ですが、その多くは原因が分かっていません。生まれつき眼瞼挙筋が未発達である、あるいは筋肉をコントロールする神経に異常が起こっていることが主な原因と言われています。

一方、後天性眼瞼下垂は少しずつ、あるいは突然瞼が下がっていく疾患です。加齢が主な原因となりますが、他にもコンタクトレンズの長時間の装用など瞼に負担をかける行為、別の疾患によって起こることもあります。

 

眼瞼下垂の症状

眼瞼下垂の症状眼瞼下垂の主な症状としては、以下のようなものがあります。
該当する症状が起きている方は、一度当院までご相談ください。

【瞼・視野に関する症状】

  • 目を十分に開けない
  • 瞼を上げにくい
  • 瞼が重くなった
  • 上瞼が目にかかって物が見えづらい
  • 視野が狭くなった
  • 目の奥が痛くなる など

【外見上の変化】

  • 「いつも眠たそう」と言われる
  • 「睨んでいるように見える」と言われる
  • 二重が間延びした
  • 一重だったのに二重になった
  • 瞼の上がくぼんで老けた印象を持たれる など

【随伴症状】

瞼が下がって目を十分に開けなくなるため、それを補おうと額の筋肉である前頭筋により瞼を上げる癖がつき、さらに自律神経の失調を招きます。
そのため、視野狭窄や外見上の変化に加え、以下のような症状を伴うことがあります。

  • 肩こり
  • 頭痛
  • めまい
  • ふらつき
  • 疲労感
  • 睡眠障害
  • 瞼・眼瞼の筋肉痙攣
  • 光が眩しい
  • 冷え
  • 便秘・下痢 など

 

予防可能な眼瞼下垂と予防できない眼瞼下垂

以下では眼瞼下垂の各タイプが予防可能なのか、あるいは予防が不可能なのかについて解説します。

【先天性眼瞼下垂】
結論から言うと、先天性眼瞼下垂については有効な予防法は確立されていません。
前述したとおり、先天性眼瞼下垂は産後直後から症状が出ている状態で、生まれつき眼瞼挙筋が未発達である、あるいは筋肉をコントロールする神経に異常が起こっていることが主な原因となります。しかし、このメカニズムが明確になっていません。
また、先天性眼瞼下垂の一部は遺伝によって起こります。先天性眼瞼下垂を発症した方が家族にいる場合、その子どもも眼瞼下垂を発症する可能性が高いです。なお、全てが遺伝というわけではなく、ほとんどは孤発性のものです
このように生活習慣や加齢などとは関係なく発症するため、現状は予防する術がありません。

【偽眼瞼下垂】
偽眼瞼下垂とは、瞼を上げる筋肉や腱膜などには異常は起こっていないですが、別の原因により「瞼が下がっているように見える状態」です。
偽眼瞼下垂の原因は、先天性と後天性に分類されます。
例えば、生まれつき一重の方や奥二重の方は、きれいな二重の方よりも瞼を開きづらいです。これは、皮膚や筋肉が厚い、脂肪が多いことなどにより瞼が重たくなっているからです。日本人は腫れぼったい瞼となる傾向があるため、先天的な偽眼瞼下垂の方が多いとされています。

先天性の偽眼瞼下垂は、先天性眼瞼下垂と違って眼瞼挙筋や神経には異常がないので別の疾患として扱う必要がありますが、生まれつきの特徴という点では同じです。そのため、予防する術はなく、改善するには手術が必要となります。
一方、後天性の偽眼瞼下垂は加齢やストレスなどによって起こる様々な疾患が原因となりますが、疾患を引き起こす要因に対して適切な対策を講じることで予防が可能となります。
このように、予防可能かどうかは偽眼瞼下垂が先天性なのか、後天性なのかによって異なります。

【後天性眼瞼下垂】
後天性眼瞼下垂は、先天性眼瞼下垂とは違い、最初は目を問題なく開けられていたにもかかわらず、少しずつもしくは突然上瞼が下がっていきます。特徴として、症状が両目に出ることが多いですが、片目だけ症状が現れる方もいらっしゃいます。
根本的な原因は、加齢や疾患など様々なものがあり、その原因に応じて神経原性眼瞼下垂、機械性眼瞼下垂、筋原性眼瞼下垂など複数の種類に分けられます。
なかでも目の腱膜(挙筋腱膜)が伸びる、あるいは緩むことで発生する腱膜性眼瞼下垂が多いです。
神経原性眼瞼下垂は、瞼を上げる筋肉(眼瞼挙筋)をコントロールする動眼神経に異常が起こることで発生します。神経に異常を起こす主な原因疾患には、重症筋無力症や脳腫瘍、脳卒中などがあります。機械性眼瞼下垂は、浮腫や腫瘍などによる機械的刺激が原因となるタイプです。筋原性眼瞼下垂は筋肉の疾患が原因となるタイプです。

下記の表は、それぞれの眼瞼下垂の関連疾患です。

眼瞼下垂の種類 関連疾患・原因
腱膜性 加齢・眼科手術
神経性 重症筋無力症、脳腫瘍、脳卒中
機械性 浮腫、腫瘍
筋原性 筋ジストロフィー、慢性進行性外眼筋麻痺

瞼を開く際は、眼瞼挙筋→挙筋腱膜→瞼板の順に力が伝わります。
後天性眼瞼下垂は、上記の表のような後天的な原因によって眼瞼挙筋の力が伝わらなくなることで起こります。
挙筋腱膜が断裂、あるいは瞼板から外れている場合、改善するには手術が不可欠です。なお、眼瞼挙筋が弱まっている状態の場合は、眼瞼挙筋を鍛えることで症状の改善が見込めます。

後天性眼瞼下垂の治療は外科手術が基本となり、眼瞼挙筋や挙筋腱膜を短縮あるいは再固定し、機能回復を目指します。また、眼はご自身の印象を左右する重要な部分のため、手術により外見も改善します。

手術方法は、眼瞼下垂の種類や重症度、挙筋機能により適切な方法が選択されます。眼瞼下垂は治療可能な疾患の合併症として起きている場合、あるいは外科手術が適切ではないと判断される場合、非外科的な治療を行うこともあります。

例えば、浮腫や腫瘍が原因となる機械的眼瞼下垂は、これら原因を除去することで解消することが多いです。重症筋無力症が原因となる神経因性眼瞼下垂症の場合、薬物療法により基礎疾患をコントロールすることで症状の解消が見込めます。

まとめると、後天性眼瞼下垂は様々な原因があり、原因に応じた治療を行うことで症状の改善・予防が可能となります。
また、瞼に負担をかける生活習慣が原因となることもあるため、生活習慣を改善することで予防効果が見込めます。この点については後ほど詳しく解説します。

【腱膜性眼瞼下垂について】

腱膜性眼瞼下垂は、挙筋腱膜が瞼板から外れることが主な原因となります。
挙筋腱膜は瞼板に対する接着力はそこまで強くありません。
加齢性の眼瞼下垂は、加齢に加え、目を擦ったりマッサージしたりする刺激により、この接着が外れることで発生します。

また、加齢性の眼瞼下垂の患者様は、上瞼が凹んでいる方が多い傾向にあります。これは、筋肉や腱膜を外部の刺激から保護する緩衝材の役目を果たす眼窩脂肪が加齢によって減少するため、ダメージを受けやすくなっていることが理由として考えられます。
そのため、上瞼が凹んでいる状態の方で眼瞼下垂と診断された場合、加齢性の眼瞼下垂の可能性が高いです。

腱膜性眼瞼下垂の手術では、挙筋腱膜を再固定する「挙筋前転術」、あるいは眼瞼挙筋を短縮して瞼板に縫合する「眼瞼挙筋短縮術」を行うことが多いです。これら手術により、挙筋腱膜と瞼板の接合が正常化し、瞼を開きやすくなります。
なお、挙筋腱膜が長時間外れた状態でいると、時間の経過とともに腱膜が薄くなり、眼瞼挙筋の力が弱まっていきます。
人の身体は加齢に伴って筋量が減少していき筋力も低下していきますが、挙筋腱膜・眼瞼挙筋も同じで加齢に伴って非薄化・脆弱化していきます。
このため、高齢者の眼瞼下垂の手術は難易度が高まります。挙筋機能が弱まった重症例では、予防が困難となり手術が必要な段階です。

眼瞼下垂の症状が現れ始めた場合、挙筋機能がまだ残っている早い段階で医療機関を受診しましょう。

 

眼瞼下垂の重症度

前述したとおり、眼瞼下垂が重度まで進行すると予防が困難となるため、軽度の段階から予防に取り組むことが重要です。
眼瞼下垂の重症度は、思い切り瞼を持ち上げ、瞼が瞳孔に被っているかどうかで容易に判定できます。

医療機関ではMRDという指標を用いてより詳細に判定を行います。

MRD-1

「MRD」とは瞼の開き具合を確認するための指標です。
MRDは、MRD-1(瞳孔中央から上眼瞼縁までの距離)とMRD-2(瞳孔中央から下眼瞼縁までの距離)に分けられます。
MRD-1は眼瞼下垂の程度を評価する指標としてよく使われています。

  • 正常:2.7~5.5mm
  • 軽度:1.5~2.7mm程度
  • 中等度:-0.5~1.5mm程度
  • 重度:-0.5mm以下

※MRD-2を測定することにより、上下左右の眼瞼の相対的位置関係を判定可能です。

 

眼瞼下垂の予防と対策

眼瞼下垂は自然治癒が望めず、改善には手術が不可欠です。
眼瞼下垂を発症しないように、以下の予防法に取り組みましょう。

日頃から取り組める予防策
眼瞼下垂の予防には、瞼に負荷がかからないように生活習慣を改善する必要があります。

【瞼にダメージを与えない】
目のかゆみが気になって擦ってしまったり、瞼をマッサージすることで、瞼に刺激が加わってしまいます。
花粉症やアトピー性皮膚炎などによるかゆみが気になる場合、医療機関を受診してかゆみを抑える治療を受けましょう。

また、アイメイクを落とす際も強く瞼を擦らないようにご注意ください。クレンジングの際に瞼に負担がかからないよう、濃いアイメイクやつけまつ毛はできれば控えた方が良いでしょう。また、アイテープやアイプチも、のり成分がかぶれの原因となり、瞼に負荷がかかるため、できれば控えることをお勧めします。

【紫外線対策と保湿ケアを徹底する】
目のかゆみが気になって擦ってしまったり、瞼をマッサージすることで、瞼に刺激が加わってしまいます。
花粉症やアトピー性皮膚炎などによるかゆみが気になる場合、医療機関を受診してかゆみを抑える治療を受けましょう。

また、アイメイクを落とす際も強く瞼を擦らないようにご注意ください。クレンジングの際に瞼に負担がかからないよう、濃いアイメイクやつけまつ毛はできれば控えた方が良いでしょう。また、アイテープやアイプチも、のり成分がかぶれの原因となり、瞼に負荷がかかるため、できれば控えることをお勧めします。

【パソコンやスマートフォンなどを見続けない】
パソコンやスマートフォンを長時間見ていると目に負担がかかってしまうため、時折目をつむる、遠くを見るなど、画面から目を離す時間を設けましょう。
また、作業中のまばたきの回数を増やすことで、目の表面の乾燥を防げます。

【コンタクトの付け外しはゆっくり行う】
コンタクトレンズの付け外しの際に瞼を強く引っ張ると、瞼に負担がかかり、眼瞼下垂が起こる可能性があります。そのため、付け外しはゆっくり行いましょう。
また、コンタクトレンズの装用時間もなるべく短時間に抑えることも有効です。ご自宅で過ごす間は眼鏡を装用することで、眼瞼挙筋の負担を抑えられます。
ハードコンタクトレンズをお使いの方は、ソフトコンタクトレンズに切り替えることでも眼瞼下垂の発症リスクを減らすことができます。

【眼瞼挙筋を鍛える】
眼瞼下垂は、瞼を上げる筋肉である眼瞼挙筋が弱まることが最大の原因です。
眼瞼下垂の発症を防ぐために、眼瞼挙筋を鍛えるトレーニングを行いましょう。以下はご自宅で行えるトレーニングの手順となります。

―眼瞼挙筋トレーニング

以下の流れを1日に数回行いましょう。

①目をゆっくりと閉じ、額の力を抜きましょう。
②左右の眉を固定するイメージで、手のひらで額全体を押さえましょう。
③両目を思い切り開き、その状態を5秒保ってください。
④静かに目を閉じてリラックスしましょう。

【ボトックス注射】
眼瞼下垂の予防法として、ボトックス注射も有効です。
ボトックスとは、ボツリヌス菌から産生される毒素を抽出・精製した薬剤で、筋肉の働きを一時的に阻害し、収縮力を低下させる効果が期待できます。
加齢などが原因となり眼瞼挙筋が弱ってくると、額の筋肉である前頭筋を使って瞼を上げる癖がつくため、眼瞼挙筋の機能が徐々に弱まっていき眼瞼下垂が起こります。
ボトックスを注射すると、前頭筋の働きが一時的に阻害されるため、眼瞼挙筋を利用して瞼を上げるようになり、眼瞼挙筋が自然に鍛えられます。これにより、眼瞼下垂の予防効果が見込めます。
なお、眼瞼下垂を発症している方に対してボトックス注射を行った場合、症状が増悪する恐れがあるため、検査を受けて眼瞼下垂を発症していないか確認した上で注射を受けましょう。

2025.02.07

眼瞼下垂のセルフチェック方法とよく間違われやすい疾患について解説!眼瞼下垂と診断されなかった場合は?

眼瞼下垂のセルフチェック方法とよく間違われやすい疾患について解説!眼瞼下垂と診断されなかった場合は?

眼瞼下垂は年齢問わずどなたでもリスクがある疾患です。しかし、ご自宅でも発症有無をセルフチェックすることが可能です。
本ページでは、眼瞼下垂のセルフチェック方法、そしてよく間違われる疾患について解説します。
「最近、瞼が重くなった気がする」と不安に思っている方は是非参考にしてください。

 

以下のような症状はありませんか?

以下のような症状はありませんか?

  • 瞼が重い
  • 瞼がたるむ
  • 目を十分に開けない
  • 目を意識して開いても視野が狭く見えづらい
  • 目線の上にある物が見えにくい
  • 目の大きさに左右差がある
  • 運転中に信号が見えづらく感じる
  • 写真撮影した際、「眠たそうに見える」と言われる
  • 10年以上にわたってハードコンタクトを使っている
  • 額のシワが深くなった
  • 原因不明の肩こりや頭痛が発生する など

上記のような症状が起きている方は、眼瞼下垂が疑われます。
これら症状のうち、該当する症状がある場合は一度当院までご相談ください。

 

眼瞼下垂とは

眼瞼下垂とは眼瞼下垂は、目を開ける腱膜や筋肉が低下することで、目をしっかり開けられなくなる疾患です。複数の種類に分類されますが、神経疾患(重症筋無力症など)によって発症するタイプもあります。また、眼瞼下垂を治療せずに放置した場合、自律神経が失調し、片頭痛や肩こりなどの症状が起こる可能性もあります。同様の症状を起こす疾患もあるため、専門医による正確な診断が必要です。

「最近、瞼が重くなってきた」「額のシワがはっきりしてきた」など、思い当たる症状があれば、一度当院をご受診ください。

 

眼瞼下垂の重症度

眼瞼下垂は、症状の進行度により、以下のように軽度・中等度・重度に分けられます。

【正常な状態】
瞼が十分に開き、白目がしっかりと見えている状態です。

【軽度の眼瞼下垂】
瞼が黒目にはかかるものの瞳孔にはかかっていない状態です。

【中等度の眼瞼下垂】
瞼が瞳孔の上縁に部分的に覆いかぶさっている状態です。

【重度の眼瞼下垂】
瞼によって瞳孔の半分以上が隠れている状態です。

 

眼瞼下垂のセルフチェック

眼瞼下垂の発症有無は、ご自宅にてセルフチェックできます。
以下の手順でセルフチェックを行い、眼瞼下垂の疑いがある場合は、一度当院へご相談ください。より詳しい検査を行います。

セルフチェックの方法
STEP.1
鏡の前で目を閉じて頂き、定規を眉毛から垂らすような形にして指で抑えて固定しましょう。

STEP.2
指で定規を押さえつつ、眉の力を使わずにそっと目を開けてください。

STEP.3
STEP.2の状態を保ったまま、スマートフォンのインカメラで瞳を撮影しましょう。

STEP.4
撮影した画像を表示し、瞳孔中央から上眼瞼縁までの距離をチェックしましょう。
3.5mm以下だった場合、眼瞼下垂の可能性があります。

 

眼瞼下垂と一重の違いについて

眼瞼下垂と一重を判別できない方は少なくないでしょう。
実際、一重の方が「眼瞼下垂なのでは?」と不安になって受診されることも多いです。

一重とは、先天的に瞼の折り目が浅い、あるいはない状態です。
一方、眼瞼下垂は目を開ける腱膜や筋肉が低下することで、目を開けられなくなる「疾患」です。このように原因が異なり、症状にも違いがあります。

また、一重の手術は「二重整形術」に当たるため、保険が適用されません。一方、眼瞼下垂の診断を受けた場合、手術には基本的に保険が適用されます。

 

眼瞼下垂の原因

眼瞼下垂は数多くの原因がありますが、以下が代表的なものです。

加齢
加齢に伴って筋肉や腱膜が弛緩し、瞼が垂れ下がることがあります。
特に60歳以上の方に多いですが、早い方だと40代から認められます。

外傷
交通事故やスポーツ中の接触などにより生じた瞼や目の外傷により、眼瞼下垂が起こることがあります。

先天性
先天的に眼瞼挙筋が弱い方は、幼少期から眼瞼下垂が起こることがあります。
また、先天性の場合は両目に症状が出ることもあります。

神経疾患
神経疾患(重症筋無力症など)が原因となり、眼瞼下垂を発症することがあります。
重症筋無力症とは、筋肉と末梢神経の繋ぎ目の神経筋接合部に障害が起こり、筋力が低下する疾患です。

瞼に負担をかける行為
日頃から瞼に負担をかける行為をしていると、眼瞼下垂が起こりやすくなります。例えば、濃いアイメイク、アイテープやアイプチの使用、まつ毛エクステの装着、コンタクトレンズ(特にハードコンタクトレンズ)の装用などが原因となります。
また、花粉症やアトピー性皮膚炎などによるかゆみが気になり、瞼を触ることも瞼に負担がかかります。
これらの行為から、瞼にダメージが少しずつ溜まっていくと、挙筋腱膜が緩む、あるいは外れてしまい、眼瞼下垂を招く可能性があります。

 

生活習慣も発症要因となります

高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を罹患している方は、眼瞼下垂の発症リスクが高いです。
眼瞼下垂とこれら生活習慣病の関連性は明確にはなっていませんが、生活習慣病を改善・予防することで、眼瞼下垂の予防効果も期待できると言われています。

    高血圧
    血圧が持続的に高い状態です。自覚症状は乏しいですが、血圧が高い状態を放っておくと動脈硬化の進行を招き、心筋梗塞など深刻な疾患に繋がる恐れがあります。
    高血圧の原因には、遺伝、ストレス、塩分の過剰摂取、飲酒、喫煙などがあります。

    糖尿病
    血糖値が高い状態が慢性化する疾患です。
    運動不足や暴飲暴食、肥満など生活習慣の乱れにより、血糖値を下げる働きのあるインスリンの分泌が不足、もしくは作用が低下することで起こります。
    糖尿病は完治させることは不可能で、悪化すると深刻な合併症を招く可能性もあります。
    そのため、運動療法や食事療法、薬物療法を行い、血糖値を安定化させる必要があります。

    脂質異常症
    血中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が高い状態、あるいはHDL(善玉)コレステロールが低い状態です。
    悪化すると動脈硬化の進行を招き、心筋梗塞や脳梗塞に繋がる恐れがあります。
    暴飲暴食や肥満、運動不足、ストレス、喫煙などが原因となり、日頃からカロリーが高い食事となっている方は発症リスクが高いため特に注意が必要です。
    治療は、食事療法と運動療法を行います。

     

    眼瞼下垂症の種類

    【後天性眼瞼下垂】
    後天性の眼瞼下垂です。これまでは特に目を問題なく開けられていたにもかかわらず、少しずつ、もしくは突然上瞼が下がってきます。いくつかの種類に分けられますが、なかでも目の腱膜(挙筋腱膜)が伸びる、あるいは緩むことで発生する「腱膜性眼瞼下垂」が多いです。

    加齢が原因となることが多いですが、その他にも、コンタクトレンズを長時間装用している方(特にハードコンタクトレンズ)、白内障・緑内障・硝子体の手術歴がある方は発症リスクが高いです。

    【先天性眼瞼下垂】
    先天性の眼瞼下垂です。症状が両目に出ることもありますが、約8割は片目に症状が出ます。主な原因は、生まれつき上眼瞼挙筋の力が弱いこと、あるいは瞼を上げる筋肉をコントロールする神経の異常です。稀に視力の発達に影響が出ることがあり、弱視や斜視の原因となることがあります。弱視や斜視が認められる場合はすぐに手術を行いますが、視力への影響が認められない場合は経過観察での対応となります。手術を行う時期は医師と相談のうえで決めていきます。

    【偽性眼瞼下垂】
    眼瞼痙攣や顔面神経麻痺などにより、一見上瞼が下がっているように見える状態で、実際に眼瞼下垂を発症しているわけではありません。眼瞼下垂の手術を実施しても症状は解消しないため、正しく見極める必要があります。

    【医原性眼瞼下垂】
    医原性眼瞼下垂は、重瞼の埋没法などの施術を受けた後、腫れが引いたにもかかわらず瞼が十分に開かない状態です。頭痛や顔面痙攣が発生する方もいます。埋没した糸を除去することにより改善が期待できます。

     

    眼瞼下垂と似た疾患

    【眼瞼皮膚弛緩症(がんけんひふしかんしょう)】
    眼瞼皮膚弛緩症とは、加齢などが原因となって皮膚が緩むことで瞼が下がる疾患です。そのため、瞼を上げる筋肉の働きには問題が発生していません。

    【眼瞼痙攣(がんけんけいれん)】
    眼瞼痙攣とは、目の周囲に存在し瞼の開閉を行う筋肉(眼輪筋)に異常が発生し、筋肉の痙攣が不随意に生じる疾患です。瞼が下がってしまうため、眼瞼下垂と混同されてしまう可能性があり、専門医による正確な診断が必要です。

    【重症筋無力症】
    重症筋無力症とは、自己免疫疾患の一種で、末梢神経と筋肉の繋ぎ目である神経筋接合部で免疫異常が発生し、筋肉側の受容体が破壊され、神経から筋肉への信号の伝達が上手くできなくなる疾患です。
    重症筋無力症の症状として眼瞼下垂が起こることがありますが、重症筋無力症では、眼瞼以外にも、全身の筋力が低下していき、構音障害や嚥下障害を示します。
    このように、症状や原因などが眼瞼下垂と異なり、治療法にも違いがあるため正確な診断が求められます。

     

    眼瞼下垂症の手術には保険が適用されます

    眼瞼下垂の手術の目的は、瞼の機能障害の改善にあります。

    美容目的の治療ではなく、疾患に対する治療のため、眼瞼下垂の診断を受けていれば手術には基本的に保険が適用されます。
    なお、眼は印象を大きく左右する部分のため、より綺麗な瞼にしたいと希望される場合は自費診療での対応となることもあります。

    例えば、歯科治療において見た目を良くするために保険適用外の素材を選択するように、瞼の治療でも保険の適用に関係なく審美性が高くなるような治療を求める方もいらっしゃいます。

     

    眼瞼下垂の手術に保険が適用されない場合

    結論から申し上げますと、保険診療も自費診療も手術の質には大きな差はありません。
    なお、当院では次のようなケースでは、自費診療をご案内しています。

    【眼瞼下垂の診断を受けていない場合】
    眼瞼下垂と診断されなかった場合、手術に保険は適用されません。
    なお、瞼が十分に開かず支障が出ている場合は、自費診療で改善が期待できます。

    【美容が主目的の場合】
    美容目的の手術は、例えばですが、目を開いた時の二重幅(見かけ上の二重幅)を広くしたいという要望などが当てはまります。見かけ上の二重幅を決定する要素は多岐にわたり、それら要素が重なって決まるため、眼瞼下垂の手術では完璧なコントロールは困難です。
    保険適用となる眼瞼下垂の手術は、機能障害の改善が一番の目的となり、見た目の希望に対して完全に沿うことはできません。ご要望が簡単なものであれば対応できますが、難しい要望は手術の失敗に繋がる可能性もあります。二重幅を広げたいというご希望に沿う形で手術を進めると、ハム目や開瞼不良に繋がる恐れがあります。
    このように、保険適用での眼瞼下垂の手術は、機能改善そして視野の回復を主目的とするため、見た目のご希望には沿えないこともあるので、ご注意ください。

    ※当院での保険適用の有無については診断後の判断となります(症状のない方は自費診療)。難しい症例の治療が必要な方は近隣の大学病院を紹介いたします。

     

    セルフチェックで眼瞼下垂が疑われる場合は当院までご相談ください

    当院で行う眼瞼下垂の手術は、形成外科の専門医が担当します。
    生活の障害となっている瞼の症状の改善だけでなく、見た目もできるだけ良い仕上がりとなるように努めています。

    また、当院の眼瞼下垂の手術は日帰りで行っています。入院を伴う手術に比べ、検査の準備などが少ないです。
    セルフチェックで眼瞼下垂が疑われる方は、一度当院までご相談ください。

    2025.02.06

    眼瞼下垂ではどのような治療を行う?眼瞼下垂の内容から、具体的な治療法や治療の流れを解説!

    眼瞼下垂ではどのような治療を行う?眼瞼下垂の内容から、具体的な治療法や治療の流れを解説!

    見えづらくなるといった症状を起こす疾患は様々あり、原因を特定するためにもまずは眼科への受診が推奨されます。

    眼科の診察・検査にて眼球に異常がないと判明した場合、原因は瞼にある可能性があります。
    原因疾患の1つに「眼瞼下垂」が挙げられます。この疾患は、形成外科にて手術を受けることにより、改善が期待できます。

    以下では、眼瞼下垂の治療法や治療の流れについて解説します。

     

    ●眼瞼下垂とは

    眼瞼下垂とは眼瞼下垂とは、目を開ける腱膜や筋肉が低下することで、目を十分に開けられなくなる疾患です。眼瞼下垂はいくつかの種類に分けられ、なかには重症筋無力症という神経障害が原因となって起こるタイプもあります。また、眼瞼下垂を放置していると自律神経が乱れ、片頭痛や肩こりが起こる可能性もあります。似たような症状を示す疾患もあるため、正確な診断が求められます。

    「最近、瞼が重くて目を開けづらくなってきた」「額のシワが目立ってきた」など、お悩みの症状がある方は一度当院までご相談ください。

     

    眼瞼下垂の症状

    眼瞼下垂を発症すると、次のような症状がよく起こります。
    特に50代以降の方は症状が強く現れることが多いため、参考にして頂ければと思います。

    • 瞼が重くなった
    • 瞼が重いせいで目を開けているのが辛い
    • 上瞼が目にかかって物が見えづらい
    • 眼精疲労や頭痛、肩こりなどの症状が繰り返す

    また、次のように外見上にも変化が現れます。

    • 「いつも眠たそう」と言われる
    • 普通にしていても「睨んでいるように見える」と言われる
    • 瞼が垂れ下がって、老けた印象を持たれる
    • 眉間の横ジワが深くなってきた
    • 何か物を見るときに眉毛や顎を上げる癖がついた

    眼瞼下垂を治療せずに放置した状態でいると、物が見えづらい、視野が狭くなったなどの症状に加え、眼精疲労や頭痛、肩こりなどの症状も伴うようになります。
    これら症状が起きている場合、一度当院までご相談ください。

     

    眼瞼下垂の原因

    眼瞼下垂が様々な原因が考えられますが、以下がよくある原因です。

    【加齢】
    加齢により筋肉や腱膜が弛緩し、瞼が垂れ下がってしまうことがあります。
    特に60代以上の方によく認められますが、早い方では40代から認められます。

    【外傷】
    交通事故やスポーツ中の接触などにより生じた瞼や目の外傷により、眼瞼下垂が起こることがあります。

    【先天性】
    先天的に瞼を上げる筋肉である眼瞼挙筋が弱い方は、生後から眼瞼下垂が認められることがあります。
    また、先天性の眼瞼下垂は両目に症状が出ることもあります。

    【神経疾患】
    神経疾患(重症筋無力症など)が原因となり、眼瞼下垂を発症することがあります。
    重症筋無力症とは、筋肉と末梢神経の繋ぎ目の神経筋接合部に障害が起こり、筋力が低下する疾患です。

    【瞼に負担をかける行為】

    日頃から瞼に負担をかける行為をしていると、眼瞼下垂が起こりやすくなります。
    例えば、濃いアイメイク、アイテープやアイプチの使用、まつ毛エクステの装着、コンタクトレンズ(特にハードコンタクトレンズ)の装用などが原因となります。

    また、花粉症やアトピー性皮膚炎などによるかゆみが気になり、瞼を触ることも瞼に負担がかかります。
    これらの行為から、瞼にダメージが少しずつ溜まっていくと、挙筋腱膜が緩む、あるいは外れてしまい、眼瞼下垂を招く可能性があります。

     

    眼瞼下垂症の種類

    後天性眼瞼下垂
    後天性の眼瞼下垂です。目を問題なく開けていたのにもかかわらず、突然、あるいは少しずつ瞼が下がっていきます。複数の種類に分類されますが、なかでも挙筋腱膜が伸びる、もしくは緩むことで発症する「腱膜性眼瞼下垂」が多いです。
    主な原因は加齢ですが、他にもコンタクトレンズ(特にハードコンタクトレンズ)を長時間装用している方、白内障・緑内障・硝子体の手術を受けた経験がある方は発症リスクが高いです。

    先天性眼瞼下垂
    先天性の眼瞼下垂です。症状が両目に出ることもありますが、約8割は片目に症状が出ます。主な原因は、生まれつき上眼瞼挙筋の力が弱いこと、あるいは瞼を上げる筋肉をコントロールする神経の異常です。稀に視力の発達に影響が出ることがあり、弱視や斜視の原因となることがあります。弱視や斜視が認められる場合はすぐに手術を行いますが、視力への影響が認められない場合は経過観察での対応となります。手術を行う時期は医師と相談のうえで決めていきます。

    偽性眼瞼下垂
    顔面神経麻痺や眼瞼痙攣などにより、瞼が下がっているように見える状態です。眼瞼下垂が実際に起こっているわけではありません。眼瞼下垂の手術を実施しても症状は解消しないため、正しい診断が求められます。

    医原性眼瞼下垂
    医原性眼瞼下垂は、重瞼の埋没法などの施術を受けた後、腫れが引いたにもかかわらず瞼が十分に開かない状態です。頭痛や顔面痙攣が発生する方もいます。埋没した糸を除去することにより改善が期待できます。

     

    眼瞼下垂症の診断

    眼瞼下垂は瞼縁角膜反射距離(MRD)、瞼裂高、挙筋機能検査の3種類の検査で判定します。

    眼瞼下垂症の診断

    MRD-1
    「MRD」とは瞼の開き具合を評価する指標です。
    MRDは、瞳孔中央から上眼瞼縁までの距離である「MRD-1」と瞳孔中央から下眼瞼縁までの距離である「MRD-2」に分けられます。
    このうち、MRD-1は眼瞼下垂の重症度を判断する指標としてよく使用されています。

    • 正常:2.7~5.5mm
    • 軽度:1.5~2.7mm程度
    • 中等度:-0.5~1.5mm程度
    • 重度:-0.5mm以下

    ※MRD-2を計測することで、上下左右の眼瞼の相対的位置関係を判定可能です。

    瞼裂高
    瞼裂高とは、黒目の最下端から上眼瞼縁までの距離です。
    眼瞼下垂の重症度を判断する指標として使われます。

    • 正常:10mm以上
    • 軽度~中等度:6~9mm程度
    • 重度:5mm以下

    挙筋機能検査
    眼瞼挙筋がどの程度動けているか調べる検査です。
    手順は以下の通りです。

    1. 1.親指で眉毛の上を押さえ、額の筋肉を使って眉毛が動かないようにする
      2.その状態のまま、最も上を見た時と最も下を見た時の上眼瞼縁の移動距離を測る
      3.移動距離から上眼瞼挙筋がどの程度機能しているかを判断する。

    • 正常:8mm以上
    • 軽度~中等度:4~7mm
    • 重度:3mm以下

    ※腱膜性眼瞼下垂は、腱膜付着部が少しずれただけなので、上眼瞼挙筋の挙上機能は正常な状態です。
    ※挙上機能が低下している場合、筋肉や筋肉をコントロールする神経に異常があると判断されます。
    ※急に上瞼が下がる場合、脳動脈瘤や脳梗塞、糖尿病などが原因となる動眼神経麻痺などの可能性があるため、精密検査としてMRI検査やCT、血液検査などを行います。
    ※朝は目を問題なく開けるのに、夕方になると下がってくる日内変動が大きい場合、重症筋無力症が疑われます。この場合は血液検査を行います。

     

    眼瞼下垂の治療法

    眼瞼下垂は内服薬や注射などの薬物療法では効果が見込めないため、治療は手術が基本となります。眼はご自身の印象を左右する重要な部位のため、患者様の状態に適した処置となるように手術は様々な方法が確立されています。当院では保険適用となる手術を行っています。以下が主な術式です。

    挙筋前転術(きょきんぜんてんじゅつ)
    緩んだ、あるいは外れた挙筋腱膜を瞼板に再固定する手術です。まずは上瞼の二重の線を切開します。その後、緩んでいる挙筋腱膜と瞼板を切り離し、挙筋腱膜を前転して、腱膜がしっかり張った状態で糸を使って瞼板に再固定します。たるみが解消されることで、目を開けやすくなります。

    ※当院では筋肉性の眼瞼下垂への手術は行っておりません。診断の結果、難しい症例の治療が必要な方は近隣の大学病院を紹介いたします。

    前頭筋吊り上げ術(ぜんとうきんつりあげじゅつ)
    上眼瞼挙筋の挙上機能が大幅に低下しており、挙筋前転術では治療効果が期待できない重症例が対象となります。太もも外側の筋膜や糸などを用いて、眉毛を上げる筋肉(前頭筋)と瞼板を連結する手術です。眉毛を上げる動作により、目を開けやすくなります。

    ※当院では筋肉性の眼瞼下垂への手術は行っておりません。診断の結果、難しい症例の治療が必要な方は近隣の大学病院を紹介いたします。

    余剰皮膚切除術(びもうかよじょうひふせつじょじゅつ)
    余ってたるんだ上眼瞼皮膚を切除する手術です。上眼瞼皮膚を切除する「眼瞼皮膚切除」と眉毛の下のラインで切除する「眉毛下皮膚切除」の2つがあります。切除範囲は、患者様が立った状態、もしくは座った状態で診察を行い決めていきます。また、目の周りを囲む眼輪筋も切除することもあります。最後は細い糸により縫合します。瞼が下がる原因となるたるんだ皮膚を切除するため、目が開きやすくなります。

     

    眼瞼下垂の手術が保険適用となる条件

    眼瞼下垂の手術全てに保険が適用されるわけでなく、以下のように条件があります。

    • 眼瞼下垂の診断を受けている。
    • 美容目的の手術ではなく、疾患や怪我の治療が目的である。
    • 治療法が、国が承認した治療法であり、厚生労働省より承認されている医薬品が使用されている。

    保険適用の有無については診断後の判断となります(症状のない方は自費診療)。
    難しい症例の治療が必要な方は近隣の大学病院を紹介いたします。

     

    治療による合併症

    【腫れ・内出血】
    ほとんどのケースで術後に腫れや内出血が起こります。症状の程度は人によって異なりますが、前が見えにくいほど症状が強く現れることもあります。
    1週間ほどで症状はかなり治まっていきますが、完全に元の状態に戻るのは3週間ほどかかります。なお、数ヶ月腫れが続くこともあります。症状の改善スピードを早くするために、漢方薬を使用することもあります。

    【左右差】
    手術は人の手で行うものなので左右差は少なからず発生しますが、その程度は医師の技量によります。
    なるべく左右差ができないように手術中に都度チェックしますが、左右差が出た場合は医師が診断を行い、修正のために再度手術を行うこともあります。

    【整容的なトラブル】
    予期しない部分が癒着してしまい、二重のラインが崩れてしまうことがあります。
    医師が診断を行い、修正のために再度手術を行うこともあります。

    【低矯正】
    低矯正は、瞼の開きが十分でない状態です。
    挙筋の状態が悪いことや、術後に腱膜の固定が緩んだことなどにより発生します。再手術を行うことがあります。

    【過矯正・閉瞼不全】
    低矯正とは反対に、瞼が開きすぎる状態です。手術中に都度確認しますが、調整ミスなどにより発生します。
    程度が大きく角膜に障害が発生する可能性がある場合は、すぐに修正手術を行うことがあります。

    【ドライアイ】
    手術前後で眼球の露出範囲が広がるため、ドライアイが発生します。
    特に、手術前からドライアイが起きている方は症状が強くなる可能性があります。

     

    手術までの流れ

    【初診】
    問診にて症状の状態や既往歴などをお伺いします。その後、検査を行って眼瞼下垂の原因を特定し、原因・状態に応じた治療法を決めていきます。
    この際に手術の予約をお取り頂きますが、基本的には2~3週間ほど先の日程となります。入院となる場合は入院中の注意事項などについての説明も行います。

    【手術】
    挙筋前転術の場合は、両目で合計1~2時間ほどかかります。
    手術後は、瞼の上をガーゼで覆います。

    【術後当日】
    術後の合併症を防ぐため、瞼を清潔な状態に維持して頂く必要があります。
    また、出血が起こらないように、なるべく安静に過ごしましょう。体温が上がると出血が起こりやすいため、当日はシャワー浴・入浴はお控えください。

    【抜糸まで】
    抜糸を行うまでは創傷部に軟膏を塗布します。
    傷は術後1~2日ほどで治っていくので、このタイミングでガーゼを外します。また、洗顔やシャワー浴も可能となります。

    【抜糸、抜糸後】
    手術から1週間後に抜糸のために当院にお越し頂きます。抜糸が終わればメイクもできるようになります。
    術後半年間は後戻りが起こる恐れがあるので、数ヶ月ごとに経過観察のためにご来院頂くことをお勧めしています。

     

    よくあるご質問

    Q.手術中は痛みを感じますか?
    局所麻酔を投与するため、手術による痛みを最小限に抑えられます。麻酔針を刺す際は軽い痛みが出ることもありますが、手術中はほぼ痛みを感じないのでご安心ください。
    手術から1時間ほど経過したら麻酔薬の効果が切れますので、痛み止めを処方します。

    Q.帰宅後に注意すべきことはありますか?
    手術後は少し院内で休憩頂き、その後にご帰宅頂けます。帰宅後は瞼に負担がかからないようにできるだけ安静にしてください。
    手術後は上瞼をガーゼで覆っているので、隠したい場合は帽子やサングラスを着用しましょう。

    Q.術後も通院はありますか?
    手術の翌日、そして抜糸のために1週間後にお越し頂きます。
    その後は各患者様の状態に応じた経過観察の対応となります。定期的に状態を確認し、必要があればケアを行います。

    Q.術後からどれくらいで運動ができるようになりますか?
    術後から48時間は腫れが強く、運動するとより腫れが強くなるため控えましょう。
    48時間以上経過すれば、ウォーキングなど軽い運動ができるようになります。激しい運動は手術から1週間後に行う抜糸を終えてから可能です。

    Q.眼瞼下垂は再発リスクがありますか?
    再発する可能性はありますが、そのリスクは非常に低いです。
    なお、加齢に伴って瞼の皮膚はたるむため、挙筋機能は問題なくとも皮膚のたるみにより、瞼が下がってしまうことがあります。
    こういった場合は、たるんだ皮膚を取り除くことで改善可能です。

    Q.白内障手術後に眼瞼下垂が起こる可能性はありますか?
    近年、白内障手術と眼瞼下垂の関連性について様々な研究が行われています。研究によると、白内障・緑内障・硝子体の手術後に眼瞼下垂が起こることがあるとされています。
    原因は、手術で使用する開瞼器により挙筋腱膜に刺激が加わることではないかと言われています。

    2025.02.05

    眼瞼下垂とはどのような病気?原因や種類、症状や治療までを網羅して解説

    眼瞼下垂とはどのような病気?原因や種類、症状や治療までを網羅して解説

    加齢に伴って瞼が重たく感じてきた、あるいは下がってきたといったお悩みは、多くの方が抱えています。見えにくさから疲れを感じてしまう、指で瞼を押さえた状態でないとテレビが見づらい、好きだった読書が億劫になったなど、辛い症状に悩まされている方もいるでしょう。眉毛を上げた状態でないと見えにくい、正面を向くときに顎を上げてしまう癖がついた、額のシワがはっきりしてきた、こういった症状は眼瞼下垂の可能性があります。また、瞼が下がってしまったことにより、逆さまつげが起こることもあります。

    当院では、眼瞼下垂の治療に対応しており、患者様の生活の質を高めるサポートを行っています。

    以下では、眼瞼下垂の原因や種類、症状や治療法まで網羅的に解説します。

     

    ●眼瞼下垂とは

    眼瞼下垂とは眼瞼下垂とは、上瞼の機能異常により瞼が下がってくる疾患で、発生リスクが高いです。上瞼が垂れ下がり、黒目の中心の瞳孔に覆いかぶさった状態です。

    瞼が重く感じて目を開けるのが面倒くさい、上瞼が垂れ下がり見えづらい、頭上のものが見えづらく頭に障害物がぶつかることが多くなるなど、日常生活に影響を及ぼします。また、顔を上げて物を見るようになるため、頭痛や肩こりが繰り返し起こるようになったり、自律神経の乱れを招いて気分が落ち込んだりすることもあります。

    眼瞼下垂の症状
    眼瞼下垂では、次のような症状が起こることが多いです。
    特に50代以降の方は症状が強く現れやすいので、是非ご確認ください。

    • 瞼が重くなる
    • 目を開けるのが辛い
    • 上瞼が垂れ下がって物が見えづらい
    • 肩こりや頭痛、眼精疲労などが繰り返し起こる

    また、外見上の変化も現れます。

    • 瞼が垂れ下がり、老けた印象を持たれる
    • 「いつも眠たそうに見える」と言われる
    • 「睨んでいるように見える」と言われる
    • 眉間の横ジワがはっきりしてきた
    • 何か物を見るときは顎や眉毛を上げるようになった

    眼瞼下垂を放置した場合、視野狭窄などに加え、肩こりや頭痛、眼精疲労などの症状も伴うようになります。
    上記のうち、該当する症状がある場合は一度当院までご相談ください。

    病状の重症度

    問診や視診、触診、眼瞼動作テストにより、重症度をある程度は判断できます。

    • 軽症:目を開けようと意識することで、瞼が黒目にはかかるものの瞳孔にはかからない
    • 中等症:目を開けようと意識しても、瞼が瞳孔に部分的に覆いかぶさる
    • 重症:目を開けようと意識しても、瞼により瞳孔の半分以上が隠れる

    別の原因疾患の可能性がある場合、眼科や神経内科にて専門的な診察・検査を受けることが必要です。

    病状の重症度

     

    ●眼瞼下垂の原因

    眼瞼下垂の原因は様々なものがありますが、以下が代表的な原因です。

    【病状の重症度】
    加齢に伴って筋肉や腱膜が弛緩し、瞼が垂れ下がることがあります。特に60歳以上の方に多いですが、早い方だと40代から認められます。

    【外傷】
    運動中の接触や交通事故などにより発生した瞼や目の外傷により、眼瞼下垂が起こることがあります。

    【先天性】
    先天的に眼瞼挙筋が弱い方は、幼少期から眼瞼下垂が起こることがあります。また、先天性の場合は両目に症状が出ることもあります。

    【神経疾患】
    神経疾患(重症筋無力症など)が原因となって眼瞼下垂が起こることもあります。重症筋無力症は、末梢神経と筋肉の繋ぎ目である神経筋接合部に障害が発生し、筋力低下が起こる疾患です。

    【瞼に負担をかける行為】
    瞼に負担がかかる行為により、眼瞼下垂が起こる可能性があります。例えば、コンタクトレンズの長時間の装用(特にハードコンタクトレンズ)、濃いアイメイク、まつ毛エクステの装着、アイテープ・アイプチの使用などが原因に挙げられます。
    また、アトピー性皮膚炎や花粉症などにより起こるかゆみが気になり、瞼を触ることでも瞼に負担がかかってしまいます。
    これらの行為により、瞼にダメージが少しずつ溜まっていくと、挙筋腱膜が緩む、あるいは外れてしまい、眼瞼下垂に繋がる可能性があります。

     

    生活習慣病も発症要因となります

    高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を発症している場合、眼瞼下垂の発症リスクが高いです。
    これら生活習慣病と眼瞼下垂の関連性ははっきりとはしていないものの、生活習慣病を改善・予防することで、眼瞼下垂の予防効果も期待できると言われています。

    【高血圧】
    血圧が持続的に高い状態です。自覚症状は乏しいですが、血圧が高い状態を放っておくと動脈硬化の進行を招き、心筋梗塞など深刻な疾患に繋がる恐れがあります。
    高血圧の原因には、遺伝、ストレス、塩分の過剰摂取、飲酒、喫煙などがあります。

    【糖尿病】
    慢性的に血糖値が高くなる疾患です。
    暴飲暴食や運動不足、肥満など生活習慣の乱れにより、インスリンの分泌が不足、あるいは作用が低下することが原因となります。
    糖尿病は完治させることはできず、重症化すると様々な合併症が起こる可能性もあります。
    そのため、食事療法や運動療法、薬物療法により血糖値を安定化させる必要があります。

    【脂質異常症】
    血中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が高い状態、あるいはHDL(善玉)コレステロールが低い状態です。
    悪化すると動脈硬化の進行を招き、心筋梗塞や脳梗塞に繋がる恐れがあります。
    暴飲暴食や肥満、運動不足、ストレス、喫煙などが原因となり、日頃からカロリーが高い食事となっている方は発症リスクが高いため特に注意が必要です。
    治療は、食事療法と運動療法を行います。

     

    眼瞼下垂症の種類

    後天性眼瞼下垂
    後天性の眼瞼下垂です。これまでは特に目を問題なく開けられていたにもかかわらず、少しずつ、もしくは突然上瞼が下がってきます。いくつかの種類に分けられますが、なかでも目の腱膜(挙筋腱膜)が伸びる、あるいは緩むことで発生する「腱膜性眼瞼下垂」が多いです。
    加齢が原因となることが多いですが、その他にも、コンタクトレンズを長時間装用している方(特にハードコンタクトレンズ)、白内障・緑内障・硝子体の手術歴がある方は発症リスクが高いです。

    先天性眼瞼下垂
    先天性の眼瞼下垂です。両目に症状が出る方もいますが、約8割は片目に眼瞼下垂が起こります。生まれつき上眼瞼挙筋の力が弱い、あるいは瞼を上げる筋肉をコントロールする神経に問題があったことが主な原因です。視力の発達に影響を及ぼし、弱視や斜視の原因となることが稀にあります。弱視や斜視が認められる場合は早急に手術を行いますが、視力への影響がない場合は経過観察での対応となります。手術時期については医師と相談のうえで決めていきます。

    偽性眼瞼下垂
    眼瞼痙攣や顔面神経麻痺などにより、一見上瞼が下がっているように見える状態で、実際に眼瞼下垂を発症しているわけではありません。眼瞼下垂の手術を実施しても症状は解消しないため、正しく見極める必要があります。

    医原性眼瞼下垂
    医原性眼瞼下垂とは、二重瞼の埋没法などの施術を受けた後、腫れが引いたのに目が開けづらい状態です。人によっては頭痛や眼瞼痙攣も起こることがあります。埋没した糸を除去することにより改善が期待できます。

     

    眼瞼下垂と似た疾患

    眼瞼皮膚弛緩症(がんけんひふしかんしょう)
    眼瞼皮膚弛緩症とは、加齢などにより皮膚が弛緩することで瞼が下がる疾患です。瞼を上げる筋肉の働きには異常は起こっていません。

    眼瞼痙攣(がんけんけいれん)
    眼瞼痙攣とは、目の周囲に存在し瞼を開け閉めする働きがある眼輪筋に異常が発生し、筋肉の痙攣が不随意に起こる疾患です。瞼が下がってしまうため、眼瞼下垂と混同されてしまう可能性があり、正確な診断が求められます。

     

    眼瞼下垂の判別方法

    アイプチや細い針金などを使って瞼を上に上げます。瞼の縦幅が大きい場合は眼瞼皮膚弛緩症の診断となり、縦幅が小さい場合は眼瞼下垂と診断されます。
    眼瞼下垂の重症度は、瞳孔中央から上瞼縁までの距離で判断されます。瞳孔中央から上瞼縁までが2~4cmの場合は軽度眼瞼下垂、2cm未満の場合は重度眼瞼下垂となります。

     

    眼瞼下垂の治療法

    眼瞼下垂は注射や内服薬などの薬物療法は効果が不十分なため、治療は手術が基本となります。眼は外見上において重要な部位のため、患者様の状態に適した処置となるように手術は様々な方法が確立されています。当院で行う手術には保険が適用されます。以下が主な術式です。

    挙筋前転術(きょきんぜんてんじゅつ)
    緩んだ挙筋腱膜を瞼板に再固定する手術です。上瞼の二重のラインを切開後、緩んでいる挙筋腱膜と瞼板を切り離し、そこから挙筋腱膜を引き出して、腱膜の張りを回復させるように瞼板に糸により再固定します。たるみが取れることで、目を開けやすくなります。

    ※当院では筋肉性の眼瞼下垂への手術は行っておりません。診断の結果、難しい症例の治療が必要な方は近隣の大学病院を紹介いたします。

    前頭筋吊り上げ術(ぜんとうきんつりあげじゅつ)
    上眼瞼挙筋の機能が大幅に低下しており、挙筋前転術では効果が見込めない重症例が対象となります。太もも外側の筋膜や糸などを利用し、眉毛を上げる筋肉(前頭筋)と瞼板を連結する手術です。眉毛を上げる動作により、瞼を楽に開けられるようになります。

    ※当院では筋肉性の眼瞼下垂への手術は行っておりません。診断の結果、難しい症例の治療が必要な方は近隣の大学病院を紹介いたします。

    余剰皮膚切除術(びもうかよじょうひふせつじょじゅつ)
    余ってたるんだ上眼瞼皮膚を切除する方法です。上眼瞼皮膚を切除する「眼瞼皮膚切除」と眉毛の下のラインで切除する「眉毛下皮膚切除」に分けられます。切除範囲は、患者様が座った状態あるいは立った状態で診察しながら決定します。また、目の周囲にある眼輪筋も切除することもあります。最後は細い糸により縫合します。瞼が下げる原因となるたるんだ皮膚を除去するため、目が開きやすくなります。

     

    手術後の休暇期間

    眼瞼下垂の手術を希望される患者様には、ダウンタイムの期間を気にされている方もいらっしゃるかと思います。
    ダウンタイムとは、治療後から普段の生活に戻れるまでの期間を意味します。すなわち、自宅での安静、生活上の行動に制限が入る期間とも解釈できます。

    当院で手術を行った場合、仕事へ戻るまでの期間は職種次第ではありますが、事務職や営業職などホワイトカラーの職種であれば、翌日から復帰できます。なお、状態によっては翌日の仕事復帰は推奨できないこともあります。万全の状態、すなわち他人からは顔を凝視されなければ気づかれない状態になるまでには、少なくとも2週間ほどかかります。1ヶ月ほど経過すれば、ほとんど他人からは気づかれない状態になります。

     

    日頃から取り組める予防法

    眼瞼下垂の予防には、瞼に負荷がかからないように生活習慣を改善する必要があります。

    【瞼にダメージを与えない】
    目がかゆいからと擦ってしまったり、瞼をマッサージしたりすることで、瞼に刺激が加わってしまいます。
    アトピー性皮膚炎や花粉症などによるかゆみが気になる場合、医療機関にてかゆみを抑える治療を受けましょう。

    また、アイメイクを落とす際も瞼を強く擦らないようにしましょう。クレンジングの際に瞼に負担がかからないよう、つけまつ毛や濃いアイメイクはできれば控えた方が良いでしょう。また、アイテープやアイプチも、のり成分がかぶれの原因となり、瞼に負荷がかかるため、できれば控えることをお勧めします。

    【紫外線対策と保湿ケアを徹底する】
    肌の乾燥や紫外線による肌のダメージは、肌に角質が溜まる角質肥厚の原因となります。瞼に角質が溜まることで重くなり、眼瞼下垂に繋がる可能性もあります。
    そのため、紫外線対策と目元の保湿ケアをしっかり行いましょう。

    【パソコンやスマートフォンなどを見続けない】
    パソコンやスマートフォンなどを長時間見ると目に負担がかかるため、適宜目をつむる、遠くを見るなど、画面から目を離す時間を設けましょう。
    また、作業中のまばたきの回数を増やすことで、目の表面の乾燥を防ぐこともできます。

    【コンタクトの付け外しはゆっくり行う】
    コンタクトレンズの付け外しの際に上瞼を強く持ち上げると、瞼に負担がかかり、眼瞼下垂が起こる可能性があります。そのため、ゆっくり付け外しを行いましょう。
    また、装用時間もなるべく短時間に抑えることも有効です。ご自宅で過ごす間は眼鏡を装用することで、眼瞼挙筋の負担を少なくできます。
    ハードコンタクトレンズをお使いの方は、ソフトコンタクトレンズに切り替えることで眼瞼下垂の発症リスクを抑えられます。

    【眼瞼挙筋を鍛える】
    眼瞼下垂は、瞼を上げる筋肉である眼瞼挙筋が弱まることが最大の原因です。
    眼瞼下垂を予防するため、眼瞼挙筋を鍛えるトレーニングを行いましょう。以下が具体的なトレーニングの手順となります。

    ―眼瞼挙筋トレーニング

    ①目をゆっくりと閉じ、額の力を抜きましょう。
    ②左右の眉を固定するイメージで、手のひらで額全体を押さえましょう。
    ③両目を思い切り開き、その状態を5秒維持してください。
    ④静かに目を閉じてリラックスしましょう。

    上記の流れを1日に数回行いましょう。

    2025.02.04

    眼瞼下垂はどういった特徴がある?症状やなりやすい人の特徴、予防法を解説!

    眼瞼下垂はどういった特徴がある?症状やなりやすい人の特徴、予防法を解説!

    「最近、目が開けづらい」「瞼が重く感じてきた」などのような症状にお悩みではないでしょうか?
    このような症状は眼瞼下垂の可能性があります。眼瞼下垂は、加齢など原因が多岐にわたります。

    本ページでは、眼瞼下垂になりやすい方の特徴、ご自身で取り組める予防法などについて詳しく説明します。
    眼瞼下垂は自然治癒することはなく、改善するためには手術が必要となります。以下で解説する特徴に当てはまる方は、予防策に取り組んでみましょう。

     

    ●眼瞼下垂とは

    眼瞼下垂とは眼瞼下垂は、目を開ける腱膜や筋肉が低下することで、目をしっかり開けられなくなる疾患です。複数の種類に分類されますが、神経疾患(重症筋無力症など)によって発症するタイプもあります。また、眼瞼下垂を治療せずに放置した場合、自律神経が失調し、片頭痛や肩こりなどの症状が起こる可能性もあります。同様の症状を起こす疾患もあるため、専門医による正確な診断が必要です。
    「最近、瞼が重くなってきた」「額のシワがはっきりしてきた」など、思い当たる症状があれば、一度当院をご受診ください。

    瞼の構造
    瞼板

    瞼の縁に沿って横たわる硬い組織で、瞼の外郭を構成して眼球を守っています。
    左右が靭帯によって眼窩の骨とくっついており、ミュラー筋と眼瞼挙筋によって持ち上げられ、目が開きます。

    ミュラー筋
    眼瞼挙筋の裏側に存在しており、眼瞼に繋がっている筋肉で、瞼の開閉をサポートする役割があります。
    交感神経によってコントロールされています。

    眼瞼挙筋・挙筋腱膜

    眼瞼挙筋は瞼を上げる働きがある筋肉で、挙筋腱膜を介して瞼板と繋がっています。
    動眼神経によってコントロールされており、脳腫瘍などの病変により動眼神経に麻痺が起こると、眼瞼下垂に繋がる可能性があります。

    前頭筋
    額に存在する眉を上げる筋肉で、顔面神経によってコントロールされています。
    眼瞼下垂を発症すると、眼を開こうと眉を上げる癖がつき、額に横ジワができてしまいます。

    眼輪筋
    目の周囲に存在する目を開閉する筋肉で、顔面神経によってコントロールされています。
    顔面神経麻痺が起こると、この筋肉の働きが阻害され、目を開け閉めしづらくなります。

     

    ●眼瞼下垂に特徴的な症状

    眼瞼下垂に特徴的な症状

    • 瞼が重くなる
    • 目を開けづらい
    • 視野が狭窄する
    • 睨んでいるような目つきになる
    • 「いつも眠たそう」と言われる
    • 目の奥が痛くなる
    • 涙が出る
    • 眼精疲労
    • 肩こりや頭痛が起こる
    • うつ病を発症する

     

    ●眼瞼下垂になりやすい人の特徴

    眼瞼下垂は様々な原因があります。
    以下では、眼瞼下垂になりやすい方の特徴を、「年齢」、「生活習慣」、「遺伝」の3つの要点にまとめて説明します。

    年齢
    眼瞼下垂は年齢問わず発症リスクがありますが、加齢に伴って瞼の筋肉である眼瞼挙筋が弱まったり、皮膚がたるんだりするため、特に中高年以降に好発します。
    韓国の健康栄養調査によると、40歳以上の発症率は13.5%となっており、以下の表のように加齢に伴って眼瞼下垂の発症率が高くなることが分かりました。

    年代 眼瞼下垂の発症率
    40代 5.4%
    50代 11.6%
    60代 19.8%
    70代 32.8%

    70歳以上では発症率が32.8%を示しており、つまり3人に1人が眼瞼下垂を発症していることになります。眼瞼下垂の最大の原因は加齢です。

    生活習慣
    日頃から瞼に負担をかける行為をしていると、眼瞼下垂が起こりやすくなります。例えば、濃いアイメイク、アイテープやアイプチの使用、まつ毛エクステの装着、コンタクトレンズ(特にハードコンタクトレンズ)の装用などが原因となります。
    また、花粉症やアトピー性皮膚炎などによるかゆみが気になり、瞼を触ることも瞼に負担がかかります。
    これらの行為から、瞼にダメージが少しずつ溜まっていくと、挙筋腱膜が緩む、あるいは外れてしまい、眼瞼下垂を招く可能性があります。

    遺伝的要因
    眼瞼下垂は、生まれつき眼瞼挙筋が未発達、あるいは筋肉を支配する神経の異常が原因となる「先天性眼瞼下垂」と、加齢や生活習慣が原因となる「後天性眼瞼下垂」に大別されます。
    先天性眼瞼下垂の一部は遺伝によって起こります。先天性眼瞼下垂を発症した方が家族にいる場合、その子どもも眼瞼下垂を発症する可能性が高いです。
    なお、全てが遺伝というわけではなく、ほとんどは孤発性のものです。先天性眼瞼下垂は約80%が片目に症状が出ますが、遺伝が原因となる場合は両目に症状が出ることが多いです。

    赤ちゃんへの視力への影響
    産後すぐの頃は視力が非常に低く、物がぼんやりとしか見えません。生後1ヶ月~3歳半頃になると視力が発達していき、物がはっきりと見えてきます。
    しかし、先天性眼瞼下垂を発症しており視野が狭窄した状態が続いた場合、視力の発達に影響が出て弱視や斜視の原因となることがあります。そのため、瞼が瞳孔に覆いかぶさっていることが認められる場合、早急に手術を行う必要があります。
    先天性眼瞼下垂の手術は全身麻酔下で行うため、かかりつけの眼科に紹介状を書いて頂き、形成外科に受診することが必要です。
    弱視や斜視が認められた場合、一度当院までご相談ください。

     

    ●眼瞼下垂の要因

    眼瞼下垂の要因は、疾患や環境的要因、精神的要因、職業的要因など、様々なものがあります。
    生活習慣の見直しや医学的アプローチにより予防効果が期待できるため、まずはリスク要因を把握しましょう。

    疾患
    高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を罹患している方は、眼瞼下垂の発症リスクが高いです。
    眼瞼下垂とこれら生活習慣病の関連性は明確にはなっていませんが、生活習慣病を改善・予防することで、眼瞼下垂の予防効果も期待できると言われています。

    高血圧
    血圧が持続的に高い状態です。自覚症状は乏しいですが、血圧が高い状態を治療せずに放っておくと動脈硬化が進行し、心筋梗塞などの深刻な疾患を引き起こす可能性があります。
    高血圧は、塩分の過剰摂取やストレス、飲酒、喫煙、遺伝などが原因となります。

    糖尿病
    血糖値が高い状態が慢性化する疾患です。
    運動不足や暴飲暴食、肥満など生活習慣の乱れにより、血糖値を下げる働きのあるインスリンの分泌が不足、もしくは作用が低下することで起こります。
    糖尿病は完治させることは不可能で、悪化すると深刻な合併症を招く可能性もあります。
    そのため、運動療法や食事療法、薬物療法を行い、血糖値を安定化させる必要があります。

    脂質異常症
    血中の悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪の値が高い状態、もしくは善玉(HDL)コレステロールの値が低い状態です。
    悪化すると動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞を招く恐れがあります。
    暴飲暴食や運動不足、肥満、ストレス、喫煙などが原因となり、普段からカロリーが高い食事となっている方は発症しやすいため、特に注意してください。
    生活習慣の改善が必要で、食事療法や運動療法が治療の中心となります。


    環境的要因
    近年、パソコンやスマートフォンなどの長時間が、眼瞼下垂の環境的要因として話題に上がっています。
    画面を長時間見続けていると、眼精疲労に加えて全身にも疲労感を覚えるようになり、眼瞼下垂の原因となります。
    他にも、紫外線や明るすぎる照明などの光による刺激、ほこりやクーラーの風邪などの機械的な刺激も、瞼の負担となり、眼瞼下垂を引き起こす可能性があります。

    精神的要因
    瞼の開閉をサポートする役割があるミュラー筋は、自律神経によってコントロールされています。
    そのため、精神的なストレスに晒されて自律神経が失調すると、ミュラー筋の働きに障害が起こり、眼瞼下垂に繋がることがあります。

    職業的要因
    工事現場や外回りの営業など屋外での仕事が多い方は、眼瞼下垂になりやすいと言われています。これは、汗などの汚れ、紫外線などにより瞼に負担がかかりやすいことが理由となります。
    なお、内勤の方も長時間のパソコン作業によりVDT症候群を発症し、眼瞼下垂のリスクが高まることもあります。

     

    ●眼瞼下垂の予防と対策

    日頃から取り組める予防法
    眼瞼下垂の予防には、瞼に負担がかからないように生活習慣の改善が必要です。

    瞼にダメージを与えない
    目のかゆみが気になって擦ってしまう、瞼をマッサージすることで、瞼に刺激が加わってしまいます。
    花粉症やアトピー性皮膚炎などによるかゆみが気になる場合、医療機関を受診してかゆみを軽減する治療を受けましょう。

    また、アイメイクを落とす際も強く瞼を擦らないようにご注意ください。クレンジングの際に瞼に負担がかからないよう、濃いアイメイクやつけまつ毛はできれば控えた方が良いでしょう。また、アイテープやアイプチも、のり成分がかぶれを起こし、瞼に負担がかかってしまうため、なるべく控えましょう。

    紫外線対策と保湿ケアを徹底する
    紫外線や肌の乾燥によって加わる肌へのダメージは、肌に角質が蓄積する角質肥厚を引き起こします。瞼に角質が蓄積することで瞼の重量が増し、眼瞼下垂を招く恐れもあります。
    そのため、紫外線対策と目元の保湿ケアを徹底しましょう。

    パソコンやスマートフォンなどを見続けない
    パソコンやスマートフォンを長時間使用すると目に負担がかかってしまうため、時折目をつむる、遠くを見るなど、画面から目を離すようにしましょう。
    また、画面を見ている時のまばたきの回数を増やすことで、目の表面の乾燥を防げます。

    コンタクトの付け外しはゆっくり行う
    コンタクトレンズの付け外しの際に瞼を強く引っ張ると、瞼に負担がかかり、眼瞼下垂の原因となることがあります。そのため、付け外しはゆっくり行いましょう。
    また、コンタクトレンズの装用時間もなるべく短時間にすることも有効で、ご自宅で過ごす間は眼鏡を装用することで、眼瞼挙筋の負担を少なくできます。
    ハードコンタクトレンズを使用中の方は、ソフトコンタクトレンズに切り替えることでも眼瞼下垂の発症リスクを減らすことができます。

    眼瞼挙筋を鍛える
    上述したように、眼瞼挙筋が弱まることで眼瞼下垂に繋がります。
    以下はご自宅でも行える眼瞼挙筋のトレーニングとなります。

    ―眼瞼挙筋トレーニング

    以下の流れを1日に数回繰り返し行いましょう。

    ①目をゆっくりと閉じ、額の力を抜きましょう。
    ②左右の眉を固定するイメージで、手のひらで額全体を押さえましょう。
    ③両目を思い切り開き、その状態を5秒維持してください。
    ④静かに目を閉じてリラックスしましょう。


    医学的アプローチ
    医学的アプローチとしては、ボトックス注射が有効です。
    ボトックスは、ボツリヌス菌から産生される毒素を抽出・精製した薬剤で、筋肉の働きを一時的に阻害し、収縮を低下させる効果があります。
    加齢により眼瞼挙筋が弱まると、それを補うために前頭筋による眉毛を動かす動作により瞼を上げる癖がつくため、眼瞼挙筋の機能が低下していき眼瞼下垂を招きます。

    額にボトックス注射を行うことで、前頭筋の働きが一時的にブロックされ、眼瞼挙筋によって瞼を上げるようになります。このように眼瞼挙筋を自然に鍛えられるため、眼瞼下垂の予防効果が期待できます。
    なお、眼瞼下垂が既に起こっている方の場合、ボトックス注射を行うと症状が増悪する可能性があるため、検査を受けて眼瞼下垂の発症有無を確認する必要があります。

     

    眼瞼下垂の症状が日常的に影響を及ぼしている場合は手術を受けましょう

    眼瞼下垂が悪化し、上瞼が重い、瞼が目にかかって視野が狭くなったなど、日常生活に影響を及ぼしている場合は手術をお勧めします。
    眼瞼挙筋の機能が大幅に低下している場合、上述したセルフケアでは治癒が望めません。
    眼瞼下垂の手術は根治が期待できるほか、早期の段階で行うことができれば、加齢による皮膚のたるみや挙筋腱膜のゆるみのスピードを緩やかにでき、アンチエイジング効果も見込めます。

    また、軽度の状態であれば手術のリスクも抑えられ、仕上がりもさらに良くなります。気になる症状があれば、早めに当院までご相談ください。

    ※当院では筋肉性の眼瞼下垂への手術は行っておりません。診断の結果、難しい症例の治療が必要な方は近隣の大学病院を紹介いたします。

     

    よくある質問

    Q.眼瞼下垂の発症リスクが高まるのは何歳頃からですか?
    近年、パソコンやスマートフォンなどの長時間が、眼瞼下垂の環境的要因として話題に上がっています。
    画面を長時間見続けていると、眼精疲労に加えて全身にも疲労感を覚えるようになり、眼瞼下垂の原因となります。
    他にも、紫外線や明るすぎる照明などの光による刺激、ほこりやクーラーの風邪などの機械的な刺激も、瞼の負担となり、眼瞼下垂を引き起こす可能性があります。

    Q.コンタクトレンズを装用していると眼瞼下垂のリスクが高まりますか?
    コンタクトレンズ’(特にハードコンタクトレンズ)の長時間の装用は、眼瞼下垂の原因となることが多いです。

    Q.アイテープやアイプチが原因となって眼瞼下垂が起こることはありますか?
    アイテープやアイプチののり成分はかぶれの原因となるため、長期間使用していると眼瞼下垂の発症リスクが高まります。また、誤った使い方も原因となり、例えば、アイテープやアイプチを使用する際に瞼を強く引っ張るなど、刺激が加わり続けると、徐々に瞼の皮膚が弱まり眼瞼下垂に繋がる可能性があります。

    Q.スマートフォンの長時間の使用は眼瞼下垂の原因になりますか?
    実は、スマートフォンの長時間使用と眼瞼下垂は直接的な関係性についてははっきりと判明しているわけではありません。しかし、目の筋肉には負担がかかっており、疲労状態が慢性化すると、瞼を支持する力が低下し、結果として眼瞼下垂に繋がることもあります。

    Q.精神的ストレスが蓄積すると、眼瞼下垂になりやすいですか?
    瞼の開閉をサポートするミュラー筋は、自律神経により支配されています。自律神経は心身のバランスをコントロールしており、ストレスなど精神的な影響を受けやすいです。そのため、過剰なストレスを受けると自律神経は失調し、ミュラー筋の働きに障害が起こり、眼瞼下垂に繋がることがあります。

    1 2
    0120164112 アクセス・診療時間
    料金表